後頭部を鈍器で殴られたような気持ちになった。
みんなの話し声が遠くに聞こえる。手が震えて、指先が冷たくなるのを感じた。
そんな藍原を引き戻したのは、扉のベルの音。
そう言って及川は二口を指さした。
さりげなく及川に腕を絡ませて、話に入り込んできた逆巻をキッと睨みつけると「こわーい」と言いながら笑っていた。
カウンターからフラフラと歩いて出ると、及川に詰め寄る。
珍しく語気を荒らげて話すと、空気が凍りついた。
そう言って携帯を取りに奥へ戻り、レイプされかけたあの日の夜に月島達から送られてきたメールを見せつけた。
『From:月島
藍原さんあの後大丈夫でしたか?』
『From:田中
あなたさん、次なんかされたときは言ってくださいね!!シメときます!!』
『From:澤村
今日のことあんま気にすんなよ?って、藍原には及川がいるか!これからもお幸せにな〜?(笑)』
『From:東峰
あの後先生にあの2年生の子突き出したけど、もう藍原には関わらないって約束したらしい。まあその、なんかあったら連絡してくれていいからな!』
澤村からのメールを読み返した時に、やるせない気持ちになって泣きそうになる。
一気に顔に熱が集まっていく藍原とは裏腹に、顔が青くなる及川。
なんの悪気も無さそうに笑うこの女は素なのか、計算してるのかは分からない。
深いため息を付くと、彼の目をじっと見てそう聞いた。
距離を着実に詰めていくと、及川のネクタイを掴んでグイッと引くと、
『体の関係持った時点で終わりなんだよ?』
とそう囁いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。