「おはよう」と皆が声をかけ合う中、藍原は肩で風を切るように正門をくぐる。
「見た見た?あんなイケメンいたっけ?」
「え、見たことない…何年生?」
おうおう、視線が痛い。
私は女だよ、イケメンって言われるのは少々気が引けるような…
隼人は2年5組の教室入ってすぐの1番前の席。
教室に入ってすぐさま、その席に腰掛けた。
周りの世界とシャットアウトするのに効果的なのは、ヘッドフォン。
そう教えてくれたのはノッポくん、もといツッキー。
「理由は知りませんが、僕が前に使ってたやつ貸します」と言って貸してくれたのだ。
素早くヘッドフォンをつけて、音楽をかける。
そうすると、どうやら隣の席らしい人が来た。
男女混合の名簿順ってことか。
藍原は「あい」だからそうそうの人がいない限り出席番号1番。
私の肩を掴んで何か話しかけているよう。
顔を上げて、その人と目を合わせる。
思ったより背が高いな、約190cm…
バッと立ち上がって興味津々と言った様子でその男の肩を掴んだ。
案外うまく行くもんだ。
入れ替わりちょろいぜ。
あ、前言撤回。
きっといつかボロが出る。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!