第38話

温かいうどんの優しさ
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2020/12/26 18:11
あなた
とおる…そこにでんわばんごうあるから…きをつけて、
熱が出た時の藍原は意味のわからないことを言い出す。
でも、その言葉を否定したら泣き出してしまうため、肯定しながら話を進めることが必要なのである。
及川徹
そっか、気をつけるね?
うん、と言いながらふにゃっと笑う。


こんな顔普段じゃ絶対に見れない。
あなた
へっくしゅん…っ!
くしゃみを1つ。


これを機に寒い寒いと言いながら震えだしてしまった。
とりあえず制服から寝巻きに着替えさせる。
及川徹
あなたちゃん自分で脱げる?
フルフルと首を横に振り、ぬがせて。と息苦しそうにそう言った。
リボンをまず外してからベスト、シャツ、最後にスカートとこなれた手つきで脱がせていく。
もう一度言います。及川徹、慣れてやがります。
豊満なバスト、キュッと引き締まった腹部に臀部。


右膝裏のミミズ . . . はいつ見ても痛々しい。


そこにそっと触れながら、もうちぎれたらダメだよ。と言い聞かせるようになぞる。
あなた
さむい、はやく…
及川徹
ああ、ごめんごめん!
.

.

.
眠りについた、藍原を起こさぬようゆっくりと部屋から出て台所へ向かう及川。


基本米があまり好きではない藍原に、風邪をひいたときはいつもうどんを作る。
及川徹
はい、あーん
あなた
たべない…
及川徹
食べないとバレーできないよ?
あなた
ばれー…したい、
「ちゃんとふーふーして」と言いながらゆっくりと瞬きをした。
口にはしを近付けると、小さく口を開けて、うどんをちゅるちゅるとすする。
及川徹
おいしい?
あなた
あじしない、
及川徹
鼻詰まってるからかな?
あなた
とおる…りょーりへた…
及川徹
ええ!?ほんと!?うどんだけは上手なつもりだけど、!!
及川の胸元に顔をうずめて、上目遣い気味で見上げると、「いつものこうすいは?」と聞いてくる。
及川徹
付けてるよ?ほらやっぱり鼻詰まってるんだと思うけど…
あなた
むう、はやく…たべさせて。
そうして、無事にお椀1杯分のうどんを何時間かかけて食べ終えた。
及川徹
ほら、もう寝た方がいいよ〜!目閉じてごらん?
落ち着くまで肩をトントンと叩かれ続け、ゆっくりとまた夢の世界へ引き戻されていった。
.

.

.
「あんたにはもう着いてけないよ。」


「橙野と2人で仲良しこよししてれば?」


「この女王様気取りが。」
あなた
うるさ、い…うるさいっ!
夢か…
ぱちぱちと瞬きしながら部屋の時計を見ると、8時半すぎ。
足に重みを感じて、目線を移すとぐっすり眠っている及川の姿が目に入った。
あなた
ばれーするの…ちょっとだけ、こわい…
まだ見ぬこの先の事を恐れ、独りでに涙を流す藍原。


インターハイ予選、どうなってしまうのだろう。


過去のしがらみに取りつかれた藍原を解放する人間は、まだ現れない。

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