第51話

岩ちゃんは私のお母ちゃんですか?
7,029
2021/01/25 07:42
時は経ち、朝の6時。


携帯のアラームがけたたましく鳴り響くのが聞こえ、そっと目を覚ました。


自分はどこにいるのか一瞬分からなくなったが、もう見慣れた部屋の天井が目に入り、及川の部屋である事を思い出す。
及川の頬はまだ紅潮しており、息も乱れ気味。


苦しそうに胸を上下させている。
こりゃあ部活は無理そうか、と踏んでとりあえずリビングへ向かうと、朝ごはんのいい香り。
岩泉一
よお
青城のジャージを既に着て、キッチンに立っていたのは岩泉。
あなた
お、おはよ。
岩泉一
今日はあなたが歩けてるみてぇで安心した。
あなた
わざわざ心配して来てくれたの?
岩泉一
まぁな。いつもの惨状見てて心配にならないはずがねぇ。
あなた
ありがとう…!
岩泉一
どっかいてぇとこあるか?
あなた
特にない、大丈夫。
「なら良かった」と言ってクシャッと笑うと頭にそっと手をおいた。
岩泉一
及川の野郎には俺から言っといてやるから、昨日のことは許してやってくれ、
岩泉一
頬の傷も、無理やりしたことも。
あなた
ああ、うん。ありがとうはじめ。
岩泉一
あいつ今日は部活無理そうか?
あなた
うん、さすがにきつそう。
岩泉一
だよな、とりあえず俺もう学校行くけど朝飯食ってから部活行けよ?
あなた
分かった、何から何までごめんね。
岩泉一
気にすんな。そこにあなたの弁当置いてっから及川のことだけ頼むわ。
あなた
任せて。
「じゃ」と言って片手を上げると、そのまま及川家を飛び出して行った岩泉。



彼がそこに置いてあると言って指さした先には、手さげバッグに入れられたお弁当があった。
はじめのお弁当おいしいんだよね。


ちょっと楽しみ。
小一時間程で自分の準備を終わらせ、及川の周りに経口補水液やらなんやらを置いて「部活行ってくるね」と声をかける。
及川徹
いってらっしゃい
とろんとした瞳で笑い、頑張ってねと藍原に声をかけた時、インターフォンが鳴り響く。
あなた
え、誰だろうこんな朝早くに。
玄関へ急いで向かって扉を開けると、そこにいたのは及川の甥であるたけるとその母。


藍原の顔を見るなり、猛はあなたーっ!と抱き着いてくるので、久しぶりだねえと頭を撫でながら抱っこする。
猛の母
あらあなたちゃん!徹くんは?
あなた
あ、徹風邪で寝込んでます。
猛の母
そうだったの?!そんなときに申し訳ないけど、猛預かっててもらってもいいかしら、
あなた
え、あ、はい
猛の母
じゃあ仕事に行ってくるわね!
なんて身勝手な母親だ。(そんなこと言っちゃいけない)
バタンとドアが閉じたのを確認してから藍原は猛に「バレー好き?」と問いかけた。
及川猛
好き!
それなら連れて行くか、仕方ない。
一応及川に猛が来たことを報告して、自分と一緒に部活へ連れて行くことを伝えた。
及川徹
猛うらやましい…あなたちゃんに抱っこされて…もうそんな年じゃないでしょ、
及川猛
いいだろ徹!
及川徹
やっぱり置いていきなよあなたちゃん…
あなた
人に面倒みられる側の徹が誰かの面倒なんて見れないでしょ。
及川徹
うぅ…それはそうだけど、
あなた
今は1人でなんの気兼ねもなくただ休みな。
及川徹
分かった…
あなた
今日猛この荷物から察して泊まりっぽいから、私ももう1晩泊まるね?
及川徹
ほんと、?!やったあ!
あなた
大人しく寝ててね。
及川徹
りょーかい!あれ、あなたちゃんそのほっぺどうし…
あなた
なんでもないよ。行ってきます。
及川徹
あ、行ってらっしゃい!
そして藍原は猛と手を繋いで、学校へ向かったのだった。

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