時は経ち、朝の6時。
携帯のアラームがけたたましく鳴り響くのが聞こえ、そっと目を覚ました。
自分はどこにいるのか一瞬分からなくなったが、もう見慣れた部屋の天井が目に入り、及川の部屋である事を思い出す。
及川の頬はまだ紅潮しており、息も乱れ気味。
苦しそうに胸を上下させている。
こりゃあ部活は無理そうか、と踏んでとりあえずリビングへ向かうと、朝ごはんのいい香り。
青城のジャージを既に着て、キッチンに立っていたのは岩泉。
「なら良かった」と言ってクシャッと笑うと頭にそっと手をおいた。
「じゃ」と言って片手を上げると、そのまま及川家を飛び出して行った岩泉。
彼がそこに置いてあると言って指さした先には、手さげバッグに入れられたお弁当があった。
はじめのお弁当おいしいんだよね。
ちょっと楽しみ。
小一時間程で自分の準備を終わらせ、及川の周りに経口補水液やらなんやらを置いて「部活行ってくるね」と声をかける。
とろんとした瞳で笑い、頑張ってねと藍原に声をかけた時、インターフォンが鳴り響く。
玄関へ急いで向かって扉を開けると、そこにいたのは及川の甥である猛とその母。
藍原の顔を見るなり、猛はあなたーっ!と抱き着いてくるので、久しぶりだねえと頭を撫でながら抱っこする。
なんて身勝手な母親だ。(そんなこと言っちゃいけない)
バタンとドアが閉じたのを確認してから藍原は猛に「バレー好き?」と問いかけた。
それなら連れて行くか、仕方ない。
一応及川に猛が来たことを報告して、自分と一緒に部活へ連れて行くことを伝えた。
そして藍原は猛と手を繋いで、学校へ向かったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。