第39話

苦しい夜を越え
7,790
2021/01/05 10:25
及川徹
あなたちゃん、?大丈夫?
泣いてるのがすぐに見つかり、優しく抱き寄せられる。
あなた
だいじょ…ぶ
及川徹
大丈夫?ほんとに?
あなた
…やっぱり、
及川徹
うん?
あなた
…だいじょばない。
あなた
おとうさんたちかえってこない、し…ばれーするのこわい…あたまいたい、
及川徹
そっかあ…
あなた
うん
今思うところを全部ぶちまけてしまおうかと考えたが、国見や西谷に思いを告げられたことは黙っておいた。
及川徹
俺が今日泊まるから、安心して寝な?
あなた
ありがと…
大好きな人が、傍にいてくれるのを肌で感じながら瞼を閉じて眠りにつく瞬間が好きだ。
.

.

.
あなた
あれ…
足元に感じていた重みが無くなり、寂しさが無性に込み上げてきた。
あなた
ゲホッ、ゲホッ…
喉の痛みから咳き込んでしまい、吐き気に襲われる。
ここで戻したらダメだと自分に言い聞かせて体を奮い立たせ、トイレまで壁伝いに歩いた。


ドアを開けて便器の中に顔を突っ込む勢いでしゃがみこむと、最早胃液しか出てこない。
トイレのドアを閉めることすらせず、大きな嗚咽を漏らす。
焼けるような喉の痛みと、どんなに吐いても治まらない吐き気に涙が止まらない。
そこから約5分経ったとき、階段を上がってくる足音が聞こえ、残った力を振り絞って「とおる…っ」と名前を呼んだ。
及川徹
あなたちゃん、?!
どうやらお風呂上がりの様子の及川を、吐瀉物で汚してしまわないかという罪悪感に溺れる。
あなた
ケホッ…うっ…
背中を下から上へとさすりあげられ、嘔吐反射を促される度に嗚咽しながら胃液を吐き出す。


ひりつくような喉の痛み、頭をかち割られるような鈍痛、胃酸を吐き続けながら泣くことで指先がピリピリと痺れる。


空咳しか出なくなった時、それは胃の中が空になったことを知らせた。
あなた
はっ…はぁっ…
及川に背を預け、自分の右手をで顔を覆い短く息を吐く。
及川徹
どう?治まった?
ゆっくりと首を縦に振り、浅く胸を上下させると及川にひょいと抱えあげられてベッドに再び横になると、すぐさま意識を手放した。


〜作者から〜


みなさんあけましておめでとうございます!
今年はたくさん更新していくので、ぜひこれからもひゅうがなつと『女王はコートに還らない』をよろしくお願いいたします🙇‍♀️

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