ひとしきり泣いた後、まだぐすぐすと鼻をならしながら、カウンター席に腰掛けてブラックコーヒーを飲んだ。
…に"がい"、
嫌いなのに飲むからだろ。
そういう気分なの、飲ませて。
泣き腫らして真っ赤な目で岩泉を見つめると、何食わぬ顔で横から砂糖とミルクを大量に入れてきた。
あああ!
よし、今日俺らが送ってこうか。
だな!
あ、いや俺が送っていきます。
伊達高の性格悪そうなミドルブロッカーくん…!?
伊達高の性格悪そうなミドルブロッカーくんが送ってく?
おい、伊達高の性格悪そうなミドルブロッカー…ふと思ったんだがあなたの何だ?
ちょっと名前…二口くんだから。それにポジションウィングスパイカーだし。
俺は、藍原さんのバイト先のただの常連で、藍原さんに一目惚れした男です。
そうか。なら、お前に任せるわ。
岩泉がそう言うなら。
じゃ、俺ら退散しようか。
いろいろありがとう。良かったらまた来てねえ。
いえ、こちらこそ迷惑かけてすいませんでした。
3人は藍原に「目冷やして寝ろよ〜」と言って順番に頭を撫でてから扉を開けて店を出ようとしたが、先頭の松川が急に止まってから振り返った。
さっきノリで告ったけど、3年ぐらい前から俺はあなたが好きだよ。
え、それはねーだろ松川…!俺も3年前からあなたのこと好きだし!
落ち着けお前ら…6年前から変わんねえ。俺もあなたがずっと好きだ。
え、ねえ本気…?
おう!
でもごめん、3人を徹を忘れるために利用したくない。
だろうな。
だから二口くん頼むわ
俺らもうちょいしたら本気だすから。
なんで俺ですか…
チャラそうだから。
確かに
確かに
ちょっとそこ2人納得しないでくださいよ。
あー、優しいなあ。と心が軽くなった。
味方がこんなにもいると心強い。
嬉しくて、自然と暖かくなった。
3人が帰って、食器を片付けていたとき二口が何も飲んでいないことに気づき、
なにか飲む?
と訊ねた。
あー、店長。藍原さんお持ち帰りで。
かしこまりました。
ええ、?
今日はゆっくり休みなさい。また明日には元気な顔見せてね。
優しく言葉を掛けられ、涙腺にうるうると来たがなんとか堪えて返事をし、急いで着替えて店の外に出ると、二口が待っていた。
二口くん、ほんとに送ってくれるの?
いいですよ。なんならそのチャリで2ケツします?
わ、それいいね。
二口が運転する自転車の後ろに乗って、藍原は抱きつくようにしてしがみついていた。
道路をしばらく走っていると、二口が先に口を開いた。
もう名前聞いちゃいましたけど、教えてくれません?あなたの口から聞きたいので。
私の名前は…あなた。藍原あなた。
ほんときれいな名前ですよ。あなたらしいというか。
折角聞いたのに名前で呼んでくれないの?
げっ…
げって何さ。まさか恥ずかしいとか?
そんなことないし…あなたさん…///
ええ?聞こえなーい
うるさいです///
そんな会話をしていると、また会話が途切れて沈黙か訪れた。
あの、利用してもらって構わないです。なんなら期限付きでも全然気にしないですし。
でも二口くんに悪い。
気にしないでくださいよ。俺はあなたさんが好きで、あなたさんは及川徹を忘れたい。
利害は一致のはず。
そうだけど…
俺はあの人たちみたいに長い間ずっと思い続けてたわけでもないです。愛の大きさで勝てる気はしません。
でも、だからこそ別れる時にはキッパリ別れられるんじゃねえかなって考えてて。
…
確かに二口が言うことにも一理ある。
何しろ、今回みたいな恋、チャラ男の専売特許ですからね。
そこまで言うなら、1ヶ月半だけ、私と付き合ってくれますか?
え、ほんとにいいんスか?!
急ブレーキをかけて自転車を止めると、後ろを振り返ってそう言った。
こんな役回りさせて申し訳ないと思ってるし、すぐに彼氏作るのもどうかと思うけど、徹に見せつけたい。
その意気ですよあなたさん。
また前を向いて、自転車をただただ走らせる。
ねえ堅治、
はい?…は、え?!
二口の背中に顔を埋めて、くぐもった声で急に名前を呼んでみせたところ、酷く驚いていた。
ごめんね、ごめんなさい…たくさん好きになれるように頑張るから。
俺は言わずもがなあなたさんが大好きです。
呼び捨てで呼んで。
あなた…でいいですか…?///
敬語じゃなくていいから。
分かった分かった。
いっぱいデートしよう。
もちろん。
毎日のように会おう。
俺がいつでも会いに行くし。
好きって言って。
好き。大好き。俺照れ屋だけど何回でも言うから。
ありがとう。
いっぱい連絡するから。
うん。
ほっとかないし、浮気もしない。
うん、うん…っ
名前たくさん呼ぶ。
楽しみに待ってる。
そして藍原の家に着き、連絡先を交換すると、家へ入ろうとする藍原の手を引いて、そっと二口は藍原と唇を重ねた。
〜作者です〜
第2章波乱万丈となっております!今回の恋は二口くんという事で私の独断できめさせていただきました🙇🏻♀️
という事で、この小説の何かが変わります…気付いた方はコメント待ってます😏
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!