第75話

代替愛
6,155
2021/03/07 13:36
ひとしきり泣いた後、まだぐすぐすと鼻をならしながら、カウンター席に腰掛けてブラックコーヒーを飲んだ。
あなた
…に"がい"、
岩泉一
嫌いなのに飲むからだろ。
あなた
そういう気分なの、飲ませて。
泣き腫らして真っ赤な目で岩泉を見つめると、何食わぬ顔で横から砂糖とミルクを大量に入れてきた。
あなた
あああ!
松川一静
よし、今日俺らが送ってこうか。
花巻貴大
だな!
二口堅治
あ、いや俺が送っていきます。
花巻貴大
伊達高の性格悪そうなミドルブロッカーくん…!?
松川一静
伊達高の性格悪そうなミドルブロッカーくんが送ってく?
岩泉一
おい、伊達高の性格悪そうなミドルブロッカー…ふと思ったんだがあなたの何だ?
あなた
ちょっと名前…二口くんだから。それにポジションウィングスパイカーだし。
二口堅治
俺は、藍原さんのバイト先のただの常連で、藍原さんに一目惚れした男です。
岩泉一
そうか。なら、お前に任せるわ。
松川一静
岩泉がそう言うなら。
花巻貴大
じゃ、俺ら退散しようか。
店長
いろいろありがとう。良かったらまた来てねえ。
岩泉一
いえ、こちらこそ迷惑かけてすいませんでした。
3人は藍原に「目冷やして寝ろよ〜」と言って順番に頭を撫でてから扉を開けて店を出ようとしたが、先頭の松川が急に止まってから振り返った。
松川一静
さっきノリで告ったけど、3年ぐらい前から俺はあなたが好きだよ。
花巻貴大
え、それはねーだろ松川…!俺も3年前からあなたのこと好きだし!
岩泉一
落ち着けお前ら…6年前から変わんねえ。俺もあなたがずっと好きだ。
あなた
え、ねえ本気…?
松川、花巻、岩泉
おう!
あなた
でもごめん、3人を徹を忘れるために利用したくない。
岩泉一
だろうな。
松川一静
だから二口くん頼むわ
花巻貴大
俺らもうちょいしたら本気だすから。
二口堅治
なんで俺ですか…
松川、花巻、岩泉
チャラそうだから。
あなた
確かに
店長
確かに
二口堅治
ちょっとそこ2人納得しないでくださいよ。
あー、優しいなあ。と心が軽くなった。


味方がこんなにもいると心強い。
嬉しくて、自然と暖かくなった。
3人が帰って、食器を片付けていたとき二口が何も飲んでいないことに気づき、
あなた
なにか飲む?
と訊ねた。
二口堅治
あー、店長。藍原さんお持ち帰りで。
店長
かしこまりました。
あなた
ええ、?
店長
今日はゆっくり休みなさい。また明日には元気な顔見せてね。
優しく言葉を掛けられ、涙腺にうるうると来たがなんとか堪えて返事をし、急いで着替えて店の外に出ると、二口が待っていた。
あなた
二口くん、ほんとに送ってくれるの?
二口堅治
いいですよ。なんならそのチャリで2ケツします?
あなた
わ、それいいね。
二口が運転する自転車の後ろに乗って、藍原は抱きつくようにしてしがみついていた。
道路をしばらく走っていると、二口が先に口を開いた。
二口堅治
もう名前聞いちゃいましたけど、教えてくれません?あなたの口から聞きたいので。
あなた
私の名前は…あなた。藍原あなた。
二口堅治
ほんときれいな名前ですよ。あなたらしいというか。
あなた
折角聞いたのに名前で呼んでくれないの?
二口堅治
げっ…
あなた
げって何さ。まさか恥ずかしいとか?
二口堅治
そんなことないし…あなたさん…///
あなた
ええ?聞こえなーい
二口堅治
うるさいです///
そんな会話をしていると、また会話が途切れて沈黙か訪れた。
二口堅治
あの、利用してもらって構わないです。なんなら期限付きでも全然気にしないですし。
あなた
でも二口くんに悪い。
二口堅治
気にしないでくださいよ。俺はあなたさんが好きで、あなたさんは及川徹を忘れたい。
二口堅治
利害は一致のはず。
あなた
そうだけど…
二口堅治
俺はあの人たちみたいに長い間ずっと思い続けてたわけでもないです。愛の大きさで勝てる気はしません。
二口堅治
でも、だからこそ別れる時にはキッパリ別れられるんじゃねえかなって考えてて。
あなた
確かに二口が言うことにも一理ある。
二口堅治
何しろ、今回みたいな恋、チャラ男の専売特許ですからね。
あなた
そこまで言うなら、1ヶ月半だけ、私と付き合ってくれますか?
二口堅治
え、ほんとにいいんスか?!
急ブレーキをかけて自転車を止めると、後ろを振り返ってそう言った。
あなた
こんな役回りさせて申し訳ないと思ってるし、すぐに彼氏作るのもどうかと思うけど、徹に見せつけたい。
二口堅治
その意気ですよあなたさん。
また前を向いて、自転車をただただ走らせる。
あなた
ねえ堅治、
二口堅治
はい?…は、え?!
二口の背中に顔を埋めて、くぐもった声で急に名前を呼んでみせたところ、酷く驚いていた。
あなた
ごめんね、ごめんなさい…たくさん好きになれるように頑張るから。
二口堅治
俺は言わずもがなあなたさんが大好きです。
あなた
呼び捨てで呼んで。
二口堅治
あなた…でいいですか…?///
あなた
敬語じゃなくていいから。
二口堅治
分かった分かった。
あなた
いっぱいデートしよう。
二口堅治
もちろん。
あなた
毎日のように会おう。
二口堅治
俺がいつでも会いに行くし。
あなた
好きって言って。
二口堅治
好き。大好き。俺照れ屋だけど何回でも言うから。
あなた
ありがとう。
二口堅治
いっぱい連絡するから。
あなた
うん。
二口堅治
ほっとかないし、浮気もしない。
あなた
うん、うん…っ
二口堅治
名前たくさん呼ぶ。
あなた
楽しみに待ってる。
そして藍原の家に着き、連絡先を交換すると、家へ入ろうとする藍原の手を引いて、そっと二口は藍原と唇を重ねた。
〜作者です〜

第2章波乱万丈となっております!今回の恋は二口くんという事で私の独断できめさせていただきました🙇🏻‍♀️
という事で、この小説の何かが変わります…気付いた方はコメント待ってます😏

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