七人で暮らす家に、日常が戻ってきていた。
朝になれば、キッチンから聞こえる包丁の音。
和也の「起きろー!」という大きな声。
それに対して「うるさいって…」と返す大吾。
まだ眠そうにしながらも、流星を抱えてリビングに来る駿佑。
その後ろを、ぺたぺたと歩く恭平。
そして――
変わらない、いつもの声。
あの日から、時間は確かに進んでいた。
謙杜も、駿佑も、流星も退院した。
体の傷は少しずつ癒えて、こうしてまた同じ屋根の下で暮らしている。
笑う時間も増えた。
ご飯も、また七人で囲めるようになった。
――それでも。
ふとした瞬間に、思い出す。
夜、電気を消した後。
物音にびくっとした時。
知らない人の声が近くでした時。
あの暗い場所。
怖くて、息ができなかった時間。
謙杜は、何もないはずの部屋で、無意識に手を握りしめる。
別の部屋では、駿佑が布団の中で目を開けていた。
眠れているはずなのに、急に目が覚める。
自分に言い聞かせるように、小さく呟く。
流星は、時々寝言で「こわい」と言うようになった。
そのたびに、誰かがすぐに駆けつける。
その声を聞くと、流星は安心したようにまた眠る。
兄たちは、気づいていた。
弟たちが、まだ完全には戻れていないこと。
笑っていても、どこかで怖さを抱えていること。
そして何より――
夜、誰もいないリビングで、ぽつりとこぼす。
和也は何も言わず、ただ隣に座る。
和也も、ゆっくり息を吐く。
大吾も少し離れたところで、壁にもたれていた。
静かな空間に、後悔だけが残る。
あの時、もっと早く気づいていれば。
あの時、ちゃんと守れていれば。
誰も、そんな思いから抜け出せずにいた。
その時だった。
「……何してんの」
振り返ると、謙杜が立っていた。
それだけ言って、少しだけ間を空ける。
三人の兄たちを見る。
その一言に、空気が止まる。
和也が、わずかに目を見開く。
少しだけ、笑う。
その言葉に、丈一郎の喉が詰まる。
駿佑と流星も、いつの間にか後ろに立っていた。
恭平も、眠そうな目で言う。
その言葉に、空気が一気に崩れる。
丈一郎は顔を覆いながら、声を震わせた。
和也も、大吾も、言葉が出ない。
謙杜は、少しだけ照れくさそうに頭をかいた。
一歩近づく。
その一言で。
兄たちの中にあった“後悔”が、静かにほどけていく。
丈一郎はゆっくり立ち上がって、謙杜の頭に手を置いた。
和也も、優しく笑う。
大吾は少しだけ目を逸らしながら言う。
七人が、同じ場所にいる。
当たり前じゃなかったその光景が、今ここにある。
怖い記憶も、消えたわけじゃない。
傷だって、全部は癒えていない。
それでも。
手を伸ばせば、隣に誰かがいる。
名前を呼べば、ちゃんと返事が返ってくる。
「……ただいま」
誰かが、ぽつりと呟いた。
「おかえり」
その声が重なる。
それだけで、十分だった。
何も持たなかった七人が選んだのは、
ただ一緒に生きること。
泣いた日も、壊れそうだった夜も、全部越えて。
この場所がある限り――
何度でも、やり直せる。
何度でも、笑い合える。
これは、七人の“家族”の物語。
終わりじゃない。
ここからも、ずっと続いていく。
ただいまと言える場所で。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
気づいたらこの作品も100話を突破してました。
ここまで続けてこれたのは、いつも読んでくれてる皆さまのおかげです。
ほんとに、ありがとうございます。
これからも大事に書いていきたいなって思ってるので、
引き続き見守ってくれたら嬉しいです。
📢 お知らせ
今、これからのストーリーの進め方でちょっと迷ってて…
せっかくなら、皆さまの意見も取り入れながら
一緒にこの作品を作っていけたらいいなって思ってます。
「こんな展開見てみたい」とか
「このキャラこうなってほしい」とか
なんでもいいので気軽に教えてほしいです。
たくさんのコメント待ってます💬











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。