💛side
――旅行当日。
玄関を開けた瞬間、空気が違った。
いつもと同じ朝のはずやのに、胸が少しだけ高鳴ってる。
みんなの声が重なって、思わず笑いそうになる。
キャリーケースを引いて外に出る。
その瞬間――
視界の端。
家の横の、細い路地。
ブロック塀の陰。
――動いた。
確実に“人”がおった。
一瞬だけやけど、確かに。
足が止まる。
心臓が、ドクンって大きく鳴った。
なんでか分からん。
でも、めっちゃ嫌な感じがする。
振り向くと、みんながこっち見てる。
空気が、一瞬だけ張りつめた。
指をさす。
丈にぃと和にぃがすぐに動いた。
二人が静かに近づいていく。
その背中を見ながら、俺は動けへんかった。
胸がざわつく。
――あの感じ。
どっかで、知ってる。
数秒後。
二人が戻ってくる。
軽く笑われる。
そう返したけど、
胸のざわつきは消えへんかった。
歩き出す。
――でも。
背中に視線を感じた気がして、
振り返りそうになる。
無理やり前を向いた。
駅までの道。
みんな楽しそうで、
俺もつられて笑う。
でも。
頭の片隅に、ずっと残ってる。
さっきの“影”。
――その頃。
ブロック塀の陰。
ゆっくりと、人影が動いた。
低く、笑う声。
二人は、遠ざかっていく七人の背中を見つめていた。
その目にあるのは――
明確な憎しみ。
そう。
あの日、謙杜・駿佑・流星を誘拐した犯人たちだった。
――脱獄。
普通じゃ考えられへんことを、
この二人はやってのけた。
その理由は一つ。
男がポケットから取り出す。
カチッ、と小さな音。
ライター。
あの日みたいに。
恐怖で、何もできん顔に。
視線は、もう七人には向いてない。
――家。
七人がやっと守った場所。
静かに笑う。
その笑いは、人のもんじゃなかった。
――そのことを。
俺らは、まだ知らん。
電車の中。
笑いが起きる。
流星が腕にくっついてくる。
その言葉を言った瞬間。
胸が少しだけ、締めつけられた。
なんでやろ。
楽しいはずやのに。
ワクワクしてるはずやのに。
それでも――
消えへん違和感。
まるで、
何かが始まる前みたいな。
静かな、不安。
電車は進む。
笑い声と一緒に。
でもその裏で。
確実に、
“あの日の続き”が動き出していた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。