和『なんで桜也って私を売ったの?』
誰もいない教室で、私を迎えに来た桜也に聞く。
桜也「………強いて言うなら私は和を売ってない。」
和『ッ!あれのどこが売ってないって言うの!?』
つい感情的になってしまい大声をあげる。
和『秋斗に身体と私を売って、挙句の果てには売った理由が権力が……って!?呆れる…』
よく分かった。なんで私を売ったのに一緒にいても気にならないんだろうって。
そりゃ勿論、気になる事もあったけど。
きっと、桜也には自分の身体を大切にして欲しかったんだ。
和『……もっと………自分の身体を大切に…しようよ……』
理由が分かった途端弱々しい声になる。
桜也「ごめ………ん。」
桜也「私さ、人に頼られてばかりで人に頼ったり甘えたりするの……苦手で、、」
話し始めた桜也は苦笑する。
桜也「でも初めて甘えたり出来るかもって思った人が和で………」
桜也「そうしたらドンドン和っていう沼に堕ちていって溺れていって……」
桜也「これって…恋だなって気付くまでそうそう時間はかからなくて………」
桜也「今からじゃ……遅いかな。」
桜也「和、好きです。恋愛感情として。友達としてじゃない。だから私と……付き合ってください」
急な告白に戸惑う。
和『………ごめんね。私、好きな人がいるから。』
きっと答えは桜也が私と身体を売ろうが売らまいが同じなんだ。
私は、春が好き。
桜也「……相手は春さんだよね。」
和『!?』
桜也「前に春さんに会ったじゃない。その時の和の顔は……恋してたよ。」
和『そっ………か』
今の社会、同性愛者は受け入れてくれるのだろうが、形だけ。
愛を抱き締めながら誰にも気付かれないようにこの愛を育むのだろう。
歪な愛を。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。