第20話

彼は一体どっちなんでしょうね?
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2021/06/13 12:13
ブラック
ブラック
…、おや。
さとしくんにはあの化け物がお父さんとお母さんに見えているらしい。自分には異形な怪異にしか映らないのだけど。あらららら、そんなねっとりとした触手と手を繋いで気持ち悪くないのか。あの怪異の話すことも支離滅裂…どころか人間の言語ではない。面白そうだからまだ黙っていようか。いよいよ鬼ヤバな事になったら、施してやろう。
さとし
さとし
お父さん、今日早かったんだね。お父さんに迎えに来てもらうのあんまりないから嬉しいや。
.
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おやおや、食欲旺盛な化け物だ。そんなに早く喰らいたいなら一思いに飲んでしまえばいいのに。それをしないのはまだ食べ頃ではないという事なのか。とするならば、何がエッセンスになり何がスパイスになり、どの状態が極上なのか。…気になる。怪異彼らの言う根城について行ってみようか。帰路につきさとしくんの家(を模した何か。見た目は同じだが取り巻く雰囲気が全く違う。)。いつもの食卓での食事。(カレー…らしいが生臭い。臓物をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような匂いだ。)美味しそうに食べるさとしくん、を、美味しそうに眺める怪異。だらだらと涎を垂らしてなんともだらしない。自制はそもそも備わっていないらしい。自我を持たず本能しか無い下劣な怪異。
さとし
さとし
?お父さんとお母さんは食べないの?
.
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さとし
さとし
そっか、お腹すいてないんだ…?ふぅん、
さとしくん、そんなこと言ってませんよ、そのお二人。どうやら聞き手にはいいように聞こえるらしい。コイツらの算段が見えてきた。こうした団欒のひとときを過ごさせ気分を上げてから一気に恐怖に落とす。恐怖を最大限に引き出すことが奴等にとっての最高の下準備。食後のデザート、父とのゲーム、母と入浴し甘える。子どもにとっては何よりの幸福な時間だろう。その幸福を味わうほどに、恐怖も膨らんでいく。母の膝で微睡むさとしくん。夢心地、最高のひととき。…頃合いか。
メキ、メキ、と骨が変形する音。半分夢の中のさとしくんは気づかない。生温かい呼気、滴る体液。大きく裂けた口。かぶりつきたいのを堪えて夢現のさとしくんを起こそうとする。食事に余念がない、…そろそろ切り上げるか、
ブラック
ブラック
!!
さとし
さとし
っふぁ、……お客さん…?お父さん、…あれ、
インターホンが鳴り響く。チャイムの音に怪異の体に穴が空く。何事か。さとしくんは目を擦っていて全くみていない。もう一度、インターホンが鳴る。ゾ、ゾ、と怪異の腹に風穴が開く。気配もなく、音もなく怪異は砂状に散り消えた。…自身が、オレちゃんが手を下したわけではない。
(なまえ)
あなた
こんばんわーー、夜分遅くすみませーん。優中部小の保健医のあなたです。東公園にさとしくんの図書バッグ落ちてたので〜。
ブラック
ブラック
……こんばんは。オレちゃんが受け取っておきます。今、ご両親共手が離せないようで。
(なまえ)
あなた
そう。さとしくんは?
ブラック
ブラック
もう寝てしまってますよ。…わざわざすみません。
(なまえ)
あなた
そ。じゃあこれで。
いつものさとしくんの家のリビング。先程のおどろおどろしい空気は嘘であったかのように消えている。食卓の臓物も、跡形もなく失せていた。


あらあら、仕方ないわね…アナタ、さとし寝ちゃったみたい。

本当だ。…起こすのもかわいそうだ、部屋連れてくよ。

ご両親の会話にも支離滅裂さや下劣な欲がない。…本物の、さとしくんのご両親だ。
ブラック
ブラック
……悪魔の癖に、魔を祓うなんて。さすが天界育ち、…ですね。
彼は悪魔に成り果てた。天使としての力は彼には残っていない。恐らく、天使として生まれた名残り。彼自身も無意識で、気づいちゃいないだろう。
ブラック
ブラック
悪魔でありながら天人としての性質も残すハイブリッド…興味深いです。
受け取った泥まみれの図書バッグ。一層彼に惹かれてしまった。だから彼のそばにいるのは、やめられない。



(ニセモノ家族のをしたかった)
(ちなみにニセモノ家族の話してるのは、「早く食べたい」「お腹すいた」「食べていい?」です。ブラックはきちんと理解してますね。)

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