6:00 起床
朝苦手すぎて眠くてイヤイヤ期が訪れるので、自分の中の2歳児に一度従って駄々をこねるところから始まる。そうすると「何やってんだろう、自分」と冷静になってアホらしくなり起きようと思えるので、オススメ(?)。
そして朝のストレッチから始まる。軽い柔軟をして朝日を浴びて、歯を磨いて、朝ごはんの支度。予約で炊いておいた1升のご飯。カフェオレを飲みながら5合分をよそい、ウインナー1袋に10個入り卵半パック分の目玉焼き。味噌汁は…インスタント3つ分。コンロが一口しかないから。これくらい食べてようやくほっと安心する。空腹だと悲しくなるからな。残ったご飯はおにぎりにする。お昼ご飯?いや、朝と昼の間の朝後ごはんの分。昼までもたないからな。
顔を洗って保湿。今まではそう肌に気を使わなかったけど、最近は軽く整えるくらいはするようになった。ワセリンを唇に塗り、髪を整える。少し毛量が増えた気がしないでもない。ハーフに髪を結えて見る。まぁこれでいいか。カジュアルな服装に着替えて出勤。ここまででおおよそ1時間。
7:00 出勤
今日は俺が校門前で生徒の服装や遅刻指導をする日。そういう日は朝が早いのだ。言い忘れていたけれど、見事フリーター男から非常勤講師に昇格しました。優中部小の養護教諭。保健の先生だ。一度やってみてから今度はきちんとやってみたいと思って。これから常勤になれるように、と思う。市井さん、キーホルダーつけすぎ。可愛いけれど引っかかるから一つにしような。軽く指導をするとごめんなさぁい…と喜んだ顔で言われ。他の先生だと舌打ちしてるの知ってるけどな。
もう何回やったよこのやりとり。ブラックにモニコでもしてもらえ。
8:30 始業
この時間からは基本保健室待機。いつ何が起きて誰が来るか分からないから。掲示物や保健だより、その他事務雑務をこなす。案外少ないように見えて時間めいっぱい使っても終わらないことがある。今日午後から5の2の保体の授業があったっけ。資料と授業計画確認しておかないと。それからもうすぐ歯科検診があるから校医とのスケジュールも今一度打ち合わせなきゃぁな。やることいっぱいだ。ガラ、と扉が開く。怪我か?風邪か?振り返ればどこぞの学年主任。…まだ来たばかりで覚えられていないや。
デスクの隣に丸椅子を持ってきて腰掛けては俺の手に手を重ねる。何だこいつ。お仕事の方、戻られなくて平気ですか?と暗に帰れと促すも、あなた先生に会えるなら仕事くらいどうってことないですよ、とガサツに笑う。困ったなぁ、ぶん殴るわけにもいかないし。どうしたもんかと小さくため息をつくと、視界の端から黒くて長いものが飛んで主任に直撃する。
頰を腫らして伸びている主任。逆に哀れに思えてくる。一応ベッドに寝かせて頬に氷嚢を当てておく。放っときゃいいんですよ、と無責任なことを宣ってくれるブラック。誰のせいだ誰の。
12:30 給食
ようやっと昼の時間。今日の給食はフライだった気がする。もちろんいつもは一人で保健室で食べるわけだけど、今日はそうじゃあない。牛乳パックを合わせて乾杯、と笑えばおずおずと同じく合わせてくる女の子。この子はずっと学校に来れていない。特に親子・友達関係でトラブルがあったわけじゃないし勉強もできないわけじゃない。けれど気持ちが足踏みして学校に来れなくなってしまった子だ。親に連れられてきても教室で足がすくんで結局帰る、を繰り返している。授業も出なくていいし教室なんて入らなくていい。保健室に飯食いにおいで、俺と飯食いながら色々話そうぜ、と説得してようやく給食時の保健室登校ができるようになった。給食を食べながら、公園で犬を見かけた、いい匂いのペンを買ってもらった、と他愛もない話して。そして食べ終えたら帰る。毎日それの繰り返しだ。
ひらひらと手を振ればあの子もまた手を振り返してくれて。勉強なんて家でどうにでもなる。友達なんて学校の外に至っていくらでも作れる。ただ行きづらい場所にも安息の場所と時間があれば意欲は湧いてくるものだ。
13:40 授業
視聴覚室に集まる5の2の子どもたち。二次性徴と性教育の話。思春期に片足突っ込む時期だからやりづらいけど、片足突っ込む時期だからこそきちんとやっておかなきゃいけないことだ。間違ったでは済まない、未来に関わること。普通ならイラストやらビデオ視聴で授業を組んだりするのだけれど、中途半端なふんわりした知識を植えつけては間違いを助長してしまう。この子達の未来のために、今のうちに赤裸々に、男女の性徴の違いや子どもを授かる方法や知識、避妊の手段と性病について伝えていく。
聞いている生徒は顔を真っ赤に、後ろで見ている担任が顔を真っ青にして授業はチャイムをもって終了となる。呆然とする生徒を置いて、では、性にはくれぐれも気をつけるように。と締め視聴覚室を後にする。あー終わった。カフェオレ飲も。
16:00 退勤
今日は7:00-16:00の勤務だからフリー。会議もないし繁忙期でもないから定時で帰れるのは素晴らしい。今日は予定もない。軽く宅トレをして汗を流したら、ゆっくり湯船に浸かろうかな。そして少し晩酌をしよう。有意義な時間になりそうだ。
17:00 帰宅。手洗いうがいを済ませて服を洗濯機にぶち込み回す。洗濯機を回すのは週に1〜2回程。でも一人暮らしならそんなものだ。回している間に宅トレ。プランク、スクワット、ランジ、その他もろもろ…別に食べ過ぎで太ったとか体力がないとかそういうわけではないのだけど。あんまり貧相に見られたくないというか、なんというか。やり切ると達成感がある。やっている間は何やってんだろう、俺。って虚しくなるけど。その後は湯を張りながら洗濯物を干す。そしてようやくくつろげる時間だ。レモングラスのバスソルトを入れて、動画を見ながらゆっくり湯船に浸かる。あえて窓は少し開けて、換気扇は回さない。静かに温かい湯に浸かって香りと水音を楽しむ。小さなこだわりだ。明るいうちから湯船に浸かるとどこか特別な気分になる。いい汗もかけるし癒されるし、風呂に入るのは生活の中での楽しみになっている。
風呂で体をじっくり温めてから上がり、髪を拭きながら冷蔵庫に直行。服は丈の長いTシャツに下はめんどくさいのでパンツ。冷えたレモンサワーを煽る。火照った体に冷たい炭酸が駆け降りていく感覚。たまんねぇ、たまんねぇなぁ…。
そもそも悪魔だけど。撮影のない日は時々こうして俺の部屋にくる。ブラックにも勧めるが笑顔で断られた。ブラックにはレモンサワーは弱いんだと。確かに魔界の酒は強そうだもんなぁ。レモン果汁を注いで再び煽る。ああ、美味い。絶対将来酸で歯がボロボロになる。そしたらブラックみたいにギザギザの歯に整えてもらおう。ふあふあと頭が浮遊感に包まれる。気分がいい。
しろよな、かわいいコイビトがこうしてねだってんだぞ(尚、かわいいは自称)。唇を尖らせて拗ねるのは酒のせい。缶を最後煽れば舌の上に一滴降りて。あーぁ、無くなった。もう1缶だけ開けたいけれど、やめとかないと明日に響くなぁ。ふわふわと眠たい。缶をテーブルに置きベッドに横になる。目をくしゅくしゅと擦る。あー、眠い、これこのまま寝るなぁ。歯磨きはしないと、酸蝕歯になる。などと考えていたら途端に口元が息苦しくなる。
くつくつと笑いながら嫌味ったらしく言う。あーむかつく。でも好き。いつものブラックらしくないがっつくような口付け。指を絡ませてベッドに縫い付けられる。こんな熱狂的なの初めてかもしれない。口付けの合間にん、ん、と声が漏れ出す。あぁ、舌が柔らかく絡んで溶け合っているような気がする。空いた彼の手が内腿を滑る。くすぐったい。ぞくぞくする。
ダメだ、今なんか言われてもわかんない。頭溶けてる。胸の奥がきゅん、きゅん、と切なくて胸を張らせてしまう。可愛らしい、という耳元に届く吐息まじりの声に悦んだ。再度、ちゅ、ちゅ、と口づけを交わしながら服の中を弄られる。ああ、だめ、だめ……もぅ、ダメ……
うるせー。酒飲んでる時にくるブラックが悪い。おやすみ、また明日学校でな。ともう一度軽くキスをする。ハイハイ、また明日。と引き下がれる彼は大人だと感じた。
23:00 就寝
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!