第2話

暴食悪魔の1日ルーティン
292
2021/05/31 12:55
6:00 起床
(なまえ)
あなた
……やぁあ、…いやぁねむたい、…いや、いやぁ、…ぁ、ンンン……!………ふぅ、起きるか…
朝苦手すぎて眠くてイヤイヤ期が訪れるので、自分の中の2歳児に一度従って駄々をこねるところから始まる。そうすると「何やってんだろう、自分」と冷静になってアホらしくなり起きようと思えるので、オススメ(?)。
そして朝のストレッチから始まる。軽い柔軟をして朝日を浴びて、歯を磨いて、朝ごはんの支度。予約で炊いておいた1升のご飯。カフェオレを飲みながら5合分をよそい、ウインナー1袋に10個入り卵半パック分の目玉焼き。味噌汁は…インスタント3つ分。コンロが一口しかないから。これくらい食べてようやくほっと安心する。空腹だと悲しくなるからな。残ったご飯はおにぎりにする。お昼ご飯?いや、朝と昼の間の朝後ごはんの分。昼までもたないからな。
顔を洗って保湿。今まではそう肌に気を使わなかったけど、最近は軽く整えるくらいはするようになった。ワセリンを唇に塗り、髪を整える。少し毛量が増えた気がしないでもない。ハーフに髪を結えて見る。まぁこれでいいか。カジュアルな服装に着替えて出勤。ここまででおおよそ1時間。
7:00 出勤
今日は俺が校門前で生徒の服装や遅刻指導をする日。そういう日は朝が早いのだ。言い忘れていたけれど、見事フリーター男から非常勤講師に昇格しました。優中部小の養護教諭。保健の先生だ。一度やってみてから今度はきちんとやってみたいと思って。これから常勤になれるように、と思う。市井さん、キーホルダーつけすぎ。可愛いけれど引っかかるから一つにしような。軽く指導をするとごめんなさぁい…と喜んだ顔で言われ。他の先生だと舌打ちしてるの知ってるけどな。
さとし
さとし
待ってまだ遅刻じゃない!遅刻じゃないチャイム鳴り終わってないー!!!
(なまえ)
あなた
遅刻です。
さとし
さとし
そんなこと言わないでよあなたさん!
(なまえ)
あなた
あなた先生。もう…明日は気をつけろよな。
もう何回やったよこのやりとり。ブラックにモニコでもしてもらえ。
8:30 始業
この時間からは基本保健室待機。いつ何が起きて誰が来るか分からないから。掲示物や保健だより、その他事務雑務をこなす。案外少ないように見えて時間めいっぱい使っても終わらないことがある。今日午後から5の2の保体の授業があったっけ。資料と授業計画確認しておかないと。それからもうすぐ歯科検診があるから校医とのスケジュールも今一度打ち合わせなきゃぁな。やることいっぱいだ。ガラ、と扉が開く。怪我か?風邪か?振り返ればどこぞの学年主任。…まだ来たばかりで覚えられていないや。
(なまえ)
あなた
先生…お疲れ様です。何処か具合でも?
.
そうじゃあないんだがな。いやぁ、あなた先生が来てから薬臭い保健室の居心地が良くなりましたよ。やっぱり華のある人が保健の先生だと生徒も安心でしょう。
デスクの隣に丸椅子を持ってきて腰掛けては俺の手に手を重ねる。何だこいつ。お仕事の方、戻られなくて平気ですか?と暗に帰れと促すも、あなた先生に会えるなら仕事くらいどうってことないですよ、とガサツに笑う。困ったなぁ、ぶん殴るわけにもいかないし。どうしたもんかと小さくため息をつくと、視界の端から黒くて長いものが飛んで主任に直撃する。
(なまえ)
あなた
あーあ、やっちゃった。派手に蹴り入れてさ。
ブラック
ブラック
人のモノに手を出そうとするからですよ。記憶は抹消しておきますのでご心配なく♪
頰を腫らして伸びている主任。逆に哀れに思えてくる。一応ベッドに寝かせて頬に氷嚢を当てておく。放っときゃいいんですよ、と無責任なことを宣ってくれるブラック。誰のせいだ誰の。
.
!!…あれ、私は何でこんなとこに寝て?ん?
(なまえ)
あなた
何を言ってるんですか。プランターの植物の世話してたら飛んできたボールが直撃したんですよ。もう…気をつけてくださいね。
12:30 給食
ようやっと昼の時間。今日の給食はフライだった気がする。もちろんいつもは一人で保健室で食べるわけだけど、今日はそうじゃあない。牛乳パックを合わせて乾杯、と笑えばおずおずと同じく合わせてくる女の子。この子はずっと学校に来れていない。特に親子・友達関係でトラブルがあったわけじゃないし勉強もできないわけじゃない。けれど気持ちが足踏みして学校に来れなくなってしまった子だ。親に連れられてきても教室で足がすくんで結局帰る、を繰り返している。授業も出なくていいし教室なんて入らなくていい。保健室に飯食いにおいで、俺と飯食いながら色々話そうぜ、と説得してようやく給食時の保健室登校ができるようになった。給食を食べながら、公園で犬を見かけた、いい匂いのペンを買ってもらった、と他愛もない話して。そして食べ終えたら帰る。毎日それの繰り返しだ。
(なまえ)
あなた
また明日。待ってるよ。
ひらひらと手を振ればあの子もまた手を振り返してくれて。勉強なんて家でどうにでもなる。友達なんて学校の外に至っていくらでも作れる。ただ行きづらい場所にも安息の場所と時間があれば意欲は湧いてくるものだ。
13:40 授業
視聴覚室に集まる5の2の子どもたち。二次性徴と性教育の話。思春期に片足突っ込む時期だからやりづらいけど、片足突っ込む時期だからこそきちんとやっておかなきゃいけないことだ。間違ったでは済まない、未来に関わること。普通ならイラストやらビデオ視聴で授業を組んだりするのだけれど、中途半端なふんわりした知識を植えつけては間違いを助長してしまう。この子達の未来のために、今のうちに赤裸々に、男女の性徴の違いや子どもを授かる方法や知識、避妊の手段と性病について伝えていく。
(なまえ)
あなた
妊娠に至る前に受精、着床と段階がある。受精は男性の精子と女性の卵子が結びついてできるもので、その受精のために行うのが、性交渉。性交渉というのは、S○Xともいって、何をするかと言うと…テキストには書いてないんだけど、まぁ、(倫理的に不適切な為規制)を、(倫理的に不適切な為規制)の中に挿し込んで、(倫理的に不適切な為規制)で、(倫理的に不適切な為規制)をすると、受精に至る。ちなみに外に出しても妊娠はするからな。
.
先生!!先生!!!???あなた先生!!!
聞いている生徒は顔を真っ赤に、後ろで見ている担任が顔を真っ青にして授業はチャイムをもって終了となる。呆然とする生徒を置いて、では、性にはくれぐれも気をつけるように。と締め視聴覚室を後にする。あー終わった。カフェオレ飲も。
ブラック
ブラック
美人保健医の性教育、刺激的ですねぇ♪
さとし
さとし
え?何?ブラックがずっと耳塞いでるから聞こえなかったんだけど。
16:00 退勤
今日は7:00-16:00の勤務だからフリー。会議もないし繁忙期でもないから定時で帰れるのは素晴らしい。今日は予定もない。軽く宅トレをして汗を流したら、ゆっくり湯船に浸かろうかな。そして少し晩酌をしよう。有意義な時間になりそうだ。
17:00 帰宅。手洗いうがいを済ませて服を洗濯機にぶち込み回す。洗濯機を回すのは週に1〜2回程。でも一人暮らしならそんなものだ。回している間に宅トレ。プランク、スクワット、ランジ、その他もろもろ…別に食べ過ぎで太ったとか体力がないとかそういうわけではないのだけど。あんまり貧相に見られたくないというか、なんというか。やり切ると達成感がある。やっている間は何やってんだろう、俺。って虚しくなるけど。その後は湯を張りながら洗濯物を干す。そしてようやくくつろげる時間だ。レモングラスのバスソルトを入れて、動画を見ながらゆっくり湯船に浸かる。あえて窓は少し開けて、換気扇は回さない。静かに温かい湯に浸かって香りと水音を楽しむ。小さなこだわりだ。明るいうちから湯船に浸かるとどこか特別な気分になる。いい汗もかけるし癒されるし、風呂に入るのは生活の中での楽しみになっている。
風呂で体をじっくり温めてから上がり、髪を拭きながら冷蔵庫に直行。服は丈の長いTシャツに下はめんどくさいのでパンツ。冷えたレモンサワーを煽る。火照った体に冷たい炭酸が駆け降りていく感覚。たまんねぇ、たまんねぇなぁ…。
(なまえ)
あなた
あ゛ーーーー…酒さえあればいい…
ブラック
ブラック
暮らしが丁寧なのか荒れているのかわかりませんね。
(なまえ)
あなた
馬鹿野郎、丁寧な暮らしを素でやってるやつなんていねーよ。丁寧な暮らしをしている人間はな、丁寧な暮らしをしている自分に酔ってんだよ。
ブラック
ブラック
全世界のインフルエンサーを敵に回しましたよ今。
そもそも悪魔だけど。撮影のない日は時々こうして俺の部屋にくる。ブラックにも勧めるが笑顔で断られた。ブラックにはレモンサワーは弱いんだと。確かに魔界の酒は強そうだもんなぁ。レモン果汁を注いで再び煽る。ああ、美味い。絶対将来酸で歯がボロボロになる。そしたらブラックみたいにギザギザの歯に整えてもらおう。ふあふあと頭が浮遊感に包まれる。気分がいい。
(なまえ)
あなた
ブラック、んー…
ブラック
ブラック
えぇ、酒臭い。
しろよな、かわいいコイビトがこうしてねだってんだぞ(尚、かわいいは自称)。唇を尖らせて拗ねるのは酒のせい。缶を最後煽れば舌の上に一滴降りて。あーぁ、無くなった。もう1缶だけ開けたいけれど、やめとかないと明日に響くなぁ。ふわふわと眠たい。缶をテーブルに置きベッドに横になる。目をくしゅくしゅと擦る。あー、眠い、これこのまま寝るなぁ。歯磨きはしないと、酸蝕歯になる。などと考えていたら途端に口元が息苦しくなる。
(なまえ)
あなた
…しないんじゃぁないのかよ
ブラック
ブラック
オレちゃんそんなこと言いましたっけ?
くつくつと笑いながら嫌味ったらしく言う。あーむかつく。でも好き。いつものブラックらしくないがっつくような口付け。指を絡ませてベッドに縫い付けられる。こんな熱狂的なの初めてかもしれない。口付けの合間にん、ん、と声が漏れ出す。あぁ、舌が柔らかく絡んで溶け合っているような気がする。空いた彼の手が内腿を滑る。くすぐったい。ぞくぞくする。
ブラック
ブラック
ちゃんと下穿いておかないとダメですよ。悪魔に食べられますので♪
(なまえ)
あなた
んー…?…ぅん、…
ダメだ、今なんか言われてもわかんない。頭溶けてる。胸の奥がきゅん、きゅん、と切なくて胸を張らせてしまう。可愛らしい、という耳元に届く吐息まじりの声に悦んだ。再度、ちゅ、ちゅ、と口づけを交わしながら服の中を弄られる。ああ、だめ、だめ……もぅ、ダメ……
(なまえ)
あなた
…眠くてダメだ………
ブラック
ブラック
…ホント、そういうとこですよ。あなたさんの悪いトコロ。
うるせー。酒飲んでる時にくるブラックが悪い。おやすみ、また明日学校でな。ともう一度軽くキスをする。ハイハイ、また明日。と引き下がれる彼は大人だと感じた。
23:00 就寝

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