第5話

5. 私は鏡の剣士。
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2020/06/09 12:09






私の足は多分折れてて走れそうになかったので、煉獄さんが背負ってくれた。
現役の柱が呼吸を使って走るとこんなにも早いのか。
爆走したチャリか車並の速さだな、これ‪…w











私が一瞬で過ぎ去っていく景色に感動していると、ふと蜜璃ちゃんから声がかかった。




甘露寺蜜璃
時雨ちゃん、私たちが来るまで何があったか教えてくれる?
しぐれ
分かりました。





私の家は呉服屋であること、声がして目を覚ましてみたら上弦の弐がいたこと、両親は多分もう死んでいること、母様に言われてお店にある日輪刀を持って逃げてきたことを伝えた。






煉獄杏寿郎
うむ!それにしても、写山少女は呼吸が使えたのだな!!氷の呼吸と言ったか?
しぐれ
ち、ちが…




違う。それは違うのだ。私は呼吸が使えない。最初に日輪刀を抜いた時、確かにこの目で日輪刀の色が変わらなかったのを見た。何故あの時氷の呼吸を使えたのか、日輪刀の色が淡い、薄い空色に染まっていたのかは分からない。しかし、童磨の頸を斬ったあと元の色に日輪刀が戻るのも確認した。






煉獄杏寿郎
それに君の母君が日輪刀を持っていたし、君自身も鬼の存在、鬼殺隊の存在を知っているようだ!!もしかして君の親は鬼殺隊の関係の者か?
しぐれ
そ、それは……






鬼の存在も鬼殺隊の存在も私が知っているのは私が転生してきたから、なんて言えるはずもなく。母様がお店に日輪刀を置いていた理由は分からないけれど。


しぐれ
分かりません
甘露寺蜜璃
そうだったのね…辛かったでしょ?頑張ったね
しぐれ
ありがとうございます、恋柱様…




蜜璃ちゃんの優しさに安心し、今まで張り詰めていた緊張の糸がスルスルと解けていくような感じがする。ほっとして涙が出そうになるのをぐっとこらえる。























私が童磨の頸を斬り落とした時に決めたことがある。それは_______________



しぐれ
あ、あの…私も鬼殺隊に入りたいです。




あの刃を振るうまでは、あの一突きをするまでは、私は将来家業である呉服店を継ぐのだと思っていた。私は写山家の一人娘。両親のあとを継ぐのは私しかいないからだ。江戸中期から写山家の人間が代々継いできたものを私も継ぐのだ、と。そんな考えは今日、あの瞬間に消えた。私は転生者。ここが鬼滅の刃の世界線ならこの先起こることを私は知っている。死ぬ運命にある人を救えるかもしれない。悲しむはずだった人を悲しませなくて済むかもしれない。それならば私はその運命を、悲しみを断ち切る刃となろう。何かしらの役に立てるのではないか、そう思うのだ。








煉獄杏寿郎
そうか!確かに両親を殺されて鬼殺隊に入る人はたくさんいる!俺もそういう人の背中は必ず押すのだがな!しかし君の場合は少し違う。
甘露寺蜜璃
時雨ちゃんの今後はお館様が決めてくださるの。
煉獄杏寿郎
しかしまぁそうだな!!写山少女にもし鬼殺隊に入ってもいいという判断が下されたらその時は俺の継子にしよう!!!!君の太刀筋に可能性を感じた!!俺の元で修行するといい!!
しぐれ
えッ……
甘露寺蜜璃
ええええ!素敵だわ!!じゃあ時雨ちゃんは私の妹弟子になるかもしれないってこと!?
煉獄杏寿郎
そうだな!!わははははははははははははははははははははははははは!!!!!!









私が!?炎柱の!?継子に!?私の推しの!?え゛ッ……………
嘘でしょ………














夢みたーーーーーーーーーい!!!!

































┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

藤の花に囲まれたそこは鬼殺隊本部、産屋敷邸。
石が敷かれた庭に跪く九つの柱。





一方で私は椅子に座らされていた。足の怪我を考慮してのことだろう。










それにしても…いやいやいやいや!柱の皆さんアニメそのまんま!画面の中から出てきたみたいな…皆さん個性派で…













水柱の義勇さんは端正なお顔立ちで作られた無表情を崩さずに本当に端っこにいるし、蟲柱のしのぶさんは笑顔だけで人をノックダウンさせられるような美しい笑みを浮かべてるし、音柱の宇髄さんは存在自体が派手で太陽に反射してキラキラしてるし、霞柱の無一郎くんはほんとにぼーっとしてるし、蛇柱の伊黒さんは本当に木の上にいるし、風柱の不死川さんは傷だらけで見てるこっちまで痛くなりそうだし、岩柱の悲鳴嶼さんはデカすぎてその圧に圧倒される。








これが鬼殺隊の最高位に君臨する“柱”なのか……。













『お館様のお成りです。』




私が柱の皆さんに感動しているとどこからか鈴の音のような声が聞こえてきた。
そして襖の向こうから出てきたのは、お館様と呼ばれる産屋敷耀哉だった。

















産屋敷耀哉
やぁ、私のかわいい子供たち。みんな元気そうで何よりだ。今日は急に集まってもらってすまないね
不死川実弥
いえ、お館様のご命令とあれば造作もございません
産屋敷耀哉
ありがとう、実弥。
産屋敷耀哉
杏寿郎、蜜璃、任務お疲れ様。まずは2人の報告から聞こうか
煉獄杏寿郎
はい。今回はとある町に出た鬼を滅するものでした。
甘露寺蜜璃
現れたのは上弦の弐でした。
胡蝶しのぶ
上弦の……弐……







私はここでしのぶさんの顔が僅かに歪むのを見逃さなかった。私は童磨を斬ればカナエさんは報われて、カナヲちゃんや伊之助が後で涙を流すようなこともないはず、とそう信じて疑わなかった。
だけどしのぶさんは?自分が姉の仇を討つと努力してきたしのぶさんは?
私は自分のことだけで人のことを全く考えていなかった。本来なら存在しないはずの“私”という異質な存在が鬼滅の刃に干渉することで原作にどのような影響を与えるか、全く考えていなかった。












宇髄天元
んで、上弦の弐はド派手に斬ったのか?
煉獄杏寿郎
ああ、斬った。
時透無一郎
わぁ、すごい
煉獄杏寿郎
斬った、が…
産屋敷耀哉
斬ったのは杏寿郎でも蜜璃でもない、だね?
悲鳴嶼行冥
それは一体どういうことか………
伊黒小芭内
柱である煉獄と甘露寺が行っておいて他に誰が斬るというのか。一般隊士か?階級は?
不死川実弥
だがよォ、昨日あの町に任務に行ったのは煉獄と甘露寺だけだろォ
冨岡義勇
誰が…
胡蝶しのぶ
では誰が斬ったんですか?
産屋敷耀哉
君たちの後ろにいる少女だよ










ざっと一気に視線が私に集まる。疑いの目を向ける者、好奇の目を向ける者、驚きを隠せない表情を向ける者。視線に乗せた感情は様々ではあるが、どれも私に刺さってとても痛い。







産屋敷耀哉
君、自己紹介をしてくれるかな?
しぐれ
はい。私は写山時雨と言います。鬼殺隊の隊士ではありません。普通の呉服屋の一人娘です。昨夜家を上弦の弐に襲われて両親を失いました。
産屋敷耀哉
ありがとう、時雨。
宇髄天元
いやいやいやいや、ちょっと待ってください、お館様
宇髄天元
この女がどうやって上弦の弐を斬ったと言うんですか?
産屋敷耀哉
時雨の持つそれは日輪刀だね?
しぐれ
はい。あの、お館様、ここで抜刀する無礼をお許しください。





私はそういうと持っていた日輪刀を鞘から抜いた。

もちろん日輪刀の色は変わっていない。





時透無一郎
色、変わってない…
胡蝶しのぶ
どうやって斬ったのですか?
しぐれ
あ、えっと…それは…
煉獄杏寿郎
写山少女は「氷の呼吸」で斬った!!!!!!
甘露寺蜜璃
日輪刀の色は淡い空色だったわ!!
悲鳴嶼行冥
しかし、今は何の色もついていないではないか
しぐれ
鬼の頸を斬ったと同時に元に戻りました。
産屋敷耀哉
そうか。でもそれじゃあ証明が出来ないね。時雨が上弦の弐を斬ったという証明が。
煉獄杏寿郎
お待ちください、お館様!!その件につきましては俺と甘露寺が目視しております!!!!
甘露寺蜜璃
ええ、確実に色は変わっていたし、上弦の弐の頸を斬ったわ!







私の日輪刀の色が変わったのは何故だろうか。色が変わったのは確か童磨の血鬼術を弾いた時……







しぐれ
(それならば…)
しぐれ
皆さんの日輪刀を私の日輪刀に当てて色が変わればそれは証明になりませんか?
しぐれ
淡い空色に変わったのも童磨の血鬼術に触れた時です






正直日輪刀同士を当てて色が変わるかは分からない。もしかしたら血鬼術限定のものかもしれない。けれど、やってみなければ分からない。









煉獄杏寿郎
それならば俺が!!写山少女、日輪刀を!




鉄色をしていた私の日輪刀は煉獄さんの日輪刀が当たった刀の先から赤い炎の色に染まっていった。
それはまさに、「炎の呼吸を使う者の日輪刀」だった。





冨岡義勇
色が………
不死川実弥
変わっただとォ?
産屋敷耀哉
なるほど、興味深いね







日輪刀が様々な色に変わる。これは一体なんなのか。
私は呼吸が使えない。それなのに………












そこへ_______________


















産屋敷あまね
それは『鏡の剣士』でございましょう。
産屋敷耀哉
あまね
御内儀様!!!!
しぐれ
あ、あまね様……
産屋敷耀哉
鏡の剣士…か。そういえばそうだね。時雨のその特徴はまさに鏡の剣士そのものだ。




「鏡の剣士」……?そんなもの原作にはもちろん登場しない。するはずがない。だって原作に私はいないのだから。本来いるはずのない私が存在することによって確実に原作が変わってきている。私のせいで及ぼす影響がいいものか、悪いものかは分からない。もし、悪いものだった場合、私は責任を取り切れる自信はない。本当に私は鬼殺隊に関わっていいのだろうか……








産屋敷耀哉
時雨はどうしたい?
しぐれ
え?



しまった…考え事に夢中でお館様のお話を聞いていなかった…






産屋敷耀哉
時雨はこのあとどうしたい?
しぐれ
わ、私は鬼殺隊に入りたい!!!!です…
煉獄杏寿郎
写山少女、改めて言おう、俺の継子になるといい!!
産屋敷耀哉
それはいいね。杏寿郎の継子になるなら心配はいらないだろう。









お館様にも認められて、私は晴れて煉獄さんの継子に…!推しの一番近くで推しを眺められる!!!!







産屋敷耀哉
じゃあ、時雨は今期の最終選別に出られるように杏寿郎に教えてもらうといいよ
しぐれ
はい!
産屋敷耀哉
それじゃあ今日の柱合会議はここまでにしよう。解散だよ
御意








さて、私も煉獄さんと一緒に帰ろうかなー…








産屋敷耀哉
時雨は少し私と一緒に来てくれるかな?












え゛……




















産屋敷耀哉
隠のみんな、時雨を背負って一緒に来てくれないかな?
しぐれ
あ、あの…お館様…?
産屋敷耀哉
少しお話をしようか
しぐれ
ぎょ、御意……







鬼殺隊の本部に初めて来たその日にお館様と1対1で話すとか無理すぎるーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!












✂︎-----㋖㋷㋣㋷線-----✂︎

〇鏡の剣士の夢主ちゃん
鬼を倒してそのまま鬼殺隊本部に運ばれた。推しの背中幸せ〜とか思ってたら柱の圧にびっくり。自分は謎の「鏡の剣士」とやらだと分かり改めて自分が鬼滅の刃にとって異質な存在であると再認識する。お館様と話すとか無理ッ…

〇鬼殺隊九つの柱
こんな小さな少女が鬼を斬っただと!?信じられん。

〇産屋敷夫婦
とある少女が上弦の鬼を倒したという鴉の報告を聞いて目をひんむいた。時雨が「鏡の剣士」だと知って納得。自分の代にあの伝説の「鏡の剣士」が現れてとても嬉しい。杏寿郎の継子になるなら心配なし!また子供が増えそうだね、頑張ってね、時雨。











※鏡の剣士とは……
伝説と呼ばれる剣士。存在するかも怪しかった。日輪刀の剣先に触れた血鬼術、呼吸を吸収し、完璧に使いこなす。鏡写しのように使いこなす仕草から名付けられた。
基本的にどんなものでも使える。唯一の欠点は鬼を一体斬るごとに呼吸がリセットされること。1対多数の戦いには不利。












遅くなりました!鏡の剣士の設定はこれから当たり前のように出てくるのでご理解の方よろしくお願い致します!!!!


コメント待っておるぞ(殴)

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