僕は今、果たして幸せなのだろうか? と、たまに自らに問いかけることがある。
彼の命をこの手で奪い去り、僕はもう一度この国へ戻ってきた。そして今は家族と共に暮らしている。
いつも通りの生活、何ら変わらない幸せ。それが、あの少しの期間のお陰で、僕は気がつかされたのかもしれない。
彼は、もういない。僕がこの手で終わらせたから。
彼は、言っていた。幸せになって、と。
過去は、変えることができない。いなくなったものは、もう戻ってこない。
けど……忘れないで、先に進むことはできるのだ。
忘れずに、未来に生かすことが出来る。
だから、僕は忘れない。彼のことを忘れたりはしない……。
僕……いいや、“私”はこれから先も彼を覚えて、進み続けるのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。