焦凍side
あなた「で?話って?」
焦凍「あぁ……」
落ち着け……
大丈夫だ。
お母さんとも話せた。
ちゃんと向き合え……
焦凍「……悪かった……」
「今までのこと……勝手に親父とあなたを重ねて、距離取って、兄として……酷い態度取ってきたと思う……」
「俺が間違ってた。……体育祭の時も、傷付けたかった訳じゃない……言葉足らずで……悪かった……」
あなた「……」
俺の話をあなたは静かに聞いていた
俺が話終わると、次はあなたが話し始めた……
あなた「……焦凍兄はさ……」
「私が欲しかったもの全部持って、生きてる……」
繋ぎ合わせるように喋るあなたの言葉は……
消え入りそうなほど小さく
弱々しかった……
それでも俺は一言一句逃さないよう
その言葉を聞いた……
初めての聞くあなたの気持ち
俺はこれ程まで向き合えていなかった
勝手に親父と重ね、傷付けてきた
それが、今、痛い程実感させられる……
あなた「私はさ……焦凍兄……」
「愛されたかったんだよ_______________」
この言葉を聞いた時呼吸が出来なくなった
あの家で……
出られない監獄なようなあの家で
1番辛い思いをしたのは他の誰でもない……
あなただ_______________
焦凍「……ぁ……ッッ……」
なんと言えばいい?
どう声をかけたらいい?
確かに冬姉も夏兄もあなたの事は気にかけていた……
だけど……
どこか一線を引いていた……
無意識に壁を作っていた……
実の兄弟まで、距離を取られたあなたは
誰に縋れば良い?
誰に愛を求めれば良い?
俺は何も言えず、固まるしかない……
口からは空気が出るだけで言葉は発せられない
そんな俺を困った様に見るあなた
あなた「……ごめんね。困られるつもりは無かった。焦凍兄がクソジジイを許すなら……私は何も言わないよ。ううん……何も言えない。そんな権利私には無いから。」
「焦凍兄は、あなたの事どう思ってる?……お母さんを傷付けた馬鹿な妹?それとも……双子なのに2つの個性を宿せなかった出来損ない?」
焦凍「そんな事ッッ!!」
「思うわけないだろ……」
あなた「……そっか……それだけで十分。帰ろ?冬姉が心配する。」
焦凍「あぁ。帰ろう。」
あなたside
--------------------
そんな事ッッ……
思う訳ないだろ!!
--------------------
不意に言われたその言葉……
その言葉が焦凍兄の本心じゃ無くても……
今は……今だけは……
その言葉に縋り付いていたい_______________
今はそれだけで愛を感じれるから……
私が生きていても良い理由になるから……
NEXT
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!