何で隣の席になってるんだ……
一人で毒を吐きながら挨拶を返す。
春野さんは私が今日初めて話した子だ。
小説などでよくある展開、転校生が隣の席でしたー、という流れ。
これが今私の目の前で起きている。
それしか答えるものが見当たらないので名前を言うと、気まずそうな雰囲気が流れた。
そりゃそうか、小説や漫画の主人公はもっと陽気で優しくて、皆の人気者だからね。
転校生の立場が逆になってるような……まぁ、いいか。
どうせこの子も……春野さんも 私がどんな人間か分かった瞬間離れていくんだから。
出ました出ました、呼び捨てOKかどうか聞く人。
特に断る理由は無いからね。
きっと、皆名字で呼ぶように変わっていくのだろうけど。
ほら、嫌味。
その瞬間、クラスメートの睨むような視線を感じる。
先生が居ないと始まるこの悪口大会。
そう言って私の方を嘲笑うかのように睨み付ける。
教室の中が凍りついたかのように寒い空気が流れる。
煩い奴等は無視。
それが私のルール。
あの子の話をあいつらの口からなんて聞きたくないから席を立つだけ。
そう自分に言い聞かせ、私は教室を出たのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。