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第1話

-そばにいるから 1. 🐧×🐹
2,068
2023/01/11 06:28
【sana side】

私は高校1年生、湊崎沙夏。


毎日ちゃんと学校に行ってるし、
友達も沢山いる。



だけど、今日は何だかいつもと違う。


朝起きる時もちょっとだるかったし、
友達の話も上手く聞こえないし、
くらくらするし。



保健室に行こうとも思ったけれど、
保健室の先生はなんだか見た目が怖い事で有名な
名井南先生。


なんで怖いのかもよく知らないけど、
とにかく行きたくは無かった。



3限目の体育の授業。


体育館でドッヂボール。


背中にボールが当たった感覚がした瞬間、
意識が途絶えた。


皆の焦る声だけが聞こえた…



sana
ん……
mina
あ、起きた?大丈夫?
この声は……と思い、
ベッドから重い身体を起こすと
やはり南先生が居た。
sana
ふぇっ!?みな…せんせっ!?
mina
ん、びっくりした?
ここ、保健室やで
びっくりしてでっかい声を出してしまい、
ちょっと怒られる。


別に南先生はそんなに怖くなかった。


強いて言うなら真顔だし、感情が分からない…
sana
な、なんでもないでしゅ
焦り過ぎて噛んでしまう。


南先生がくすっと笑うのが聞こえる。


南先生でも笑うんだ…



恥ずかしくて俯くと、
南先生に頭を撫でられ、
そのままおでこに手を当てられた。
mina
熱、測るか。ちょっと待ってな
その行動が優しくて、
笑った南先生が可愛すぎて。


なんで皆が怖がっているのか、
よく分からなかった。


表情が豊かじゃないからなのかな?
しばらくすると体温計を見つけた南先生が、
差し出してくれる。
mina
熱、測れる?
sana
はい!ありがとうございます!
体温を測ると、37.9と表示される。
mina
結構高いな。保護者呼んで、家帰らせるか…
sana
あ、あの……
保護者と聞いて、思い出した事を伝える。
sana
今日と明日、両親とも訳あって帰って来なくて…
これには流石に南先生も焦った様子だった。


そう、私の母は旅行、父は仕事で外国に居て、
帰って来ないのだ。
南先生はちょっと迷ってたが、やがて何かを決心したらしい。
mina
うちが引き取ってもええ?
sana
え、どういう事…ですか?
引き取るって、え?


どういう事?
mina
今日はうち来いひん?
急に言われて驚く。


私は言われるがままに頷いた。


家に居ても、様態が悪化しそうだし…
mina
じゃあ授業終わるまで、ここに居な。
sana
はい!
南先生の家……ちょっとワクワクする。



と、突然ベッドのカーテンが閉められる。


ベッドにひとりぼっち。ちょっと寂しくて、
氷の入った枕を強く掴む。


それでも涙が出そうになってしまう。


熱のせいかな…
sana
寂しいなぁ…
ついつい零してしまった独り言。


まずい、と思った頃にはもう遅く、
カーテン越しに南先生の笑い声が聞こえる。
mina
カーテン、開けるな?
カーテンが開けられて、南先生と目が合う。


絶対に今の自分の顔は赤いから、
開けないで欲しかったのに。


タイミング悪いなぁ…



恥ずかしくて布団の中に潜ろうとするけど、
ちょっと遅かったみたいで
南先生の目に捕まった。
mina
ふふっ、可愛ええな。
そのまま南先生は私の居るベッドに座った。
mina
寝たかったらいつでも寝てええからな。
その言葉を最後に、私の記憶は途絶えた。

次に起きたのは、多分時計が5限目の終わりを指した頃。
sana
ふぇっ!?
急に大きな声を出してしまったのは、
ベッドに座っている南先生に
抱きついた状態で寝てしまっていたから。
sana
ご、ごめんなさいっ!
急いで離すと、
南先生は太腿に置いていたノートパソコンを
閉じてからこちらを振り返る。
mina
別にええよ?可愛かったし。
sana
かわっ……
顔が徐々に熱くなって行くのが分かる。

布団に潜ってしばらくすると、
また南先生がノートパソコンを打つ音が聞こえてきた。

ちょっと安心する。
mina
あ、そういえばお弁当とバッグ、取ってきたで
sana
えっ、ありがとうございます!
丁度ご飯も食べたかったな、
なんて思っていたら、
お腹が可愛らしくない音で鳴ってしまう。

恥ずかしくてお腹を抑える私に、
南先生は優しく、温かいお弁当をくれた。
sana
えっ、温めて……
mina
ん、温めといたで、一応。
熱かったら言ってな?
sana
ほんとにありがとうございます!!
ずっとぺこぺこする私を
優しく笑ってくれる南先生。


南先生の隣に座ってほかほかのご飯を食べる。


美味しくてついにこにこしてしまう。



私がご飯を食べている間に、
南先生は氷枕を変えておいてくれた。
ご飯を食べ終わり、
近くにあった私のバッグにしまう。
mina
後1時間は寝ててな。
それまでに仕事終わらせとくから…
sana
はい!ありがとうございますっ
ありがとうございますしか
言っていない気がする。


私はベッドに横になって、
そのまま眠りに落ちた。
次に起きたのは、南先生の車の中だった。
sana
あれっ、寝て……
mina
ん、おはよ
私は助手席で座っていたらしく、
リュックを探すと後部座席にあった。


ちょっと安心。
mina
そろそろうち着くで。
sana
はい!
 ︎︎
南先生の家は広い一軒家だった。


緑を基調とした可愛らしい色の家具が
並べられていた。
mina
ここに荷物、置いといて良いからな。
sana
はい!
南先生が指した先は先生の部屋らしい。


可愛らしいペンギンの
抱き枕が置かれているベッドが置かれている。


端に荷物を置いてこっそりペンギンだけ取って。

そのペンギンを抱き締めると、
先生の匂いがした。

胸が締め付けられるような気がした。

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