夏休みもあっという間に終わり、始業式の日になった。周りからは愚痴や不満がこぼれているが、私は違った。
これから、毎日沙也加や、栞に会える。
多くの人にとっては代わり映えのない日常でも、私にとっては幸せのような日々だった。
大丈夫かな…
でも、感染症だし、お見舞いにも行けないよね…
なんとなく緊張して、声が上ずってしまった。
あれ以来、全然喋ってないけど、やっぱり、好きという思いは変わらない。正直、話しかけられるだけで、かなり、ドキドキして、口から心臓が出そうになる。
ええええ!?嘘でしょ!?
そんなの、無理だよー
ああー、なんでOKしちゃうのー。
そりゃあ、嬉しいけど、緊張しちゃうし、絶対黙りこくっちゃうよ…何やってんの、私。
そう言って、翔くんは自分の机に戻っていった。朝礼のあと、体育館へ行き、始業式が始まった。
やっぱり、校長先生の話って、聞いてて退屈だし、眠いなぁ…。
適当に他のことを考えている間に、校長先生の話は終わった。
教室へ戻る途中、沙也加が話しかけてきた。
教室に着くと、明日の時間割の確認などをしてから、すぐに解散となった。
沙也加がのびをしながら喋っていると、翔くんがやってきた。
帰り道を歩きながら、沙也加が話した。
あ、それはまずい。絶対に集中できない。
大丈夫?って言われてもここまできたら、引くに引けないよ、トホホ…
2人に連れられて、私も駅まで走った。
なんとか電車には間に合って、いつもの駅で翔くんと降りた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。