第8話

好きの時間。⑵
532
2018/01/30 17:04
あなた

電車、間に合って良かったね。

だなー、意外と焦った。
なかなか顔を見て喋られない。
なんか緊張しちゃうなぁ…。

駅から出て、家の前に着いた時、
なぁ…
あなた

え?何?

やっぱいいや、ごめん。
じゃあ、また後でな。
あなた

うん、またね

何だったんだろう?

玄関で靴を脱ぎながら、翔くんが何を言おうとしたのかが気になっていたら、思いっきり段差に足をひっかけて、盛大にこけた。

痛…
お母さん
大丈夫!?
あなた

うん、大丈夫…

その言葉とは裏腹に、膝は赤くなって、じんじんと痛み始めていた。
お母さん
変わったね、あなた。
あなた

え?

お母さん
前は、そんなにキラキラした表情を、見せなかったから。
キラキラ…?
お母さん
学校行くまで、ずっと、あなた、笑顔も見せずに、なんとも言えない顔しかしてなかったから…。でも、学校行ってから、笑顔どころか、毎日、表情が変わって、生き生きとしてるもの。
あなた

そう、かな?

お母さん
うん、今はすごくキラキラしてて、素敵だよ。
久しぶりに、お母さんと話をした気がした。
毎日、喋ってたはずなのに。
あなた

ありがと。
あ、後で、友達の家に行く約束したんだけど、いい?

お母さん
もちろん。
早く着替えて行きなさい。
あなた

うん。

何気ない会話だったはずなのに、なんでか、
歯がゆいくらい、うれしくて、楽しかった。

それから、私は急いで着替えて、電車に乗り、沙也加に連絡した。そして、10分と経たないうちに、沙也加の降りる駅に着いた。
沙也加
あっ、あなた〜🎶
あなた

お待たせー。

沙也加
もうすぐで翔も来るから!
てゆうか、一緒に来ればよかったのにー
あなた

え、いや、お互い、着替えとかもあると思ってさー

さすがに、あんなに気まずい空気で電車に乗るなんてできない…。
よぉ、待った?
沙也加
うん、待った。
そんなに遅れてねーだろ?
一瞬、目が合った。
でも、なぜかすぐに逸らしてしまった。
いや、どうしてかなんて分かってる、好きだからに決まってる。だけど…
沙也加
まぁ、とりあえず行こ?
あなた

そ、そーだね!行こいこ!

ぎこちない喋り方をしながら、私は沙也加の後について行った。程なくして、沙也加の家に着いた。割とどこにでもありそうな二階建ての家だったけれど、玄関のインテリアや家具はかなり豪華で、少し気が引けた。
あなた

お、お邪魔します…。

沙也加
そんなに緊張しなくて大丈夫だってー笑笑
私の部屋は2階だから、こっちだよー。
ふと、翔くんの方を見ると、慣れた足取りで階段を登っていた。

前は沙也加の家の近くに住んでたらしいし、何回か来たことあるのかな…。

沙也加の部屋は、可愛いというよりもおしゃれな感じで、ドレッサーなども綺麗に飾ってあった。
沙也加
じゃあ、さっさと勉強終わらせちゃお!
部屋の真ん中にある大きめのテーブルにノートや教科書を広げると、すぐに勉強会が始まった。一応勉強していたとはいえ、やはり内容に追いつけきれていない。

でも、二人が丁寧に教えてくれるおかげで、ほとんどの内容を理解することが出来た。
沙也加
一通り終わったし、私、お菓子とか持ってくるねー!
あなた

え、あ、私も手伝うよ?

沙也加
大丈夫だってー、それに、あなたはお客様なんだし!
そう言って、沙也加はお菓子を取りに行ってしまった。

気まずい。気まずすぎる。
さっきまでは沙也加がいたからよかったけど、
二人きりとなると、やはり気まずい。
あなた

あの、さっき、言おうとしてたことって、何だったの?

あ、いや、それは、その…

プリ小説オーディオドラマ