少女は叫び始める。
「ぎゃぁぁぁあぁぁぁ」
少女の母親はナイフを少女に投げ、高笑いをしている。
少女の足に、腕に、首に、グサグサと刺さる。
最後は心臓へと突き刺さり、少女は瞳を閉じる。
数秒後、目を覚まし、また同じことが繰り返される。
少女の中から徐々に“痛み”という感情が抜けていった。
暫く耐えた少女はさすがに限界を超えてしまった。
少女は少年を見つめ、小さく呟くのだった。
「たすけて……」
少年は振り向く。
少年の目の焦点が元通りになった。
少年は“ドリームロボット”を蹴り飛ばし、一方方向へと走り出す。
「やめろ!まだ死ぬなぁぁぁ!!!」
少年は途中、何かに弾き飛ばされてしまった。
「なんだよ…このまま何もせず見てろって言うのか……!!!」
目には見えない壁が二人を完全に離していた。
少年は訴えるように叫ぶ。
壁を叩き、少女に気づいてもらえるように。
「自由になれー!こいつらを倒して、二人で自由になろう!こんな時に言うことじゃねーかもだけど…俺はキミのことが好きなんだ!同情なんてしてない!キミに一目惚れしたんだ……。だから、生きてくれ!!!死なないでくれ……もう大切な人を失いたくない!」
少女は振り向くが、話す間もなく消えては現れるのだ。
少女は虚ろな目をしていた。
少女は立ち上がり、壁へ走る。
少女は語る。
「この地獄から出て、誰かが救ってくれるの?……どうせ、裏切る。人は裏切る……どんなに頑張って訴えても無駄なだけ!もういいよ……」
少女の瞳の奥にはまだ少しだけ光が見えた。
少年は諦めなかった。
少年は何かを想像しながら語る。
「キミは見たことがある?空ってさ、すっごく広いんだ!無限にどこまでも続いてるんだよ。キミも僕も皆、人間は一人一つ特別な力を持つらしいんだ。でも…それは自分でしか開花することは出来ない……。キミは強くなれるよ!まだ遅くない!僕ももっと強くなるから、キミも一緒にこの世界から抜け出そう!そして、二人で現実世界で会おうよ!絶対絶対会おう!約束だ!!!僕は絶対に裏切らない!」
少年は少し不安があった。
“裏切られるのは僕の方かもしれない”
少女は赤い涙を流し、少年に問う。
「本当に…?本当に裏切らないでくれるの?私を助けてくれるの?…捨てないでくれるの?………私…つよくなれるかなぁ……」
少女は思う。
“裏切らない人間がいるわけない……”
少年は嬉しそうに叫ぶ。
「うん!キミは強くなれる!一緒に願おうよ!“幸せが訪れますように”ってさ。」
少女に瞳は少しずつ光を取り戻していった。
少女は別人のように明るく叫ぶ。
「……分かった!約束だよ!キミも…キミも負けないで!!!こいつらを倒してまた話そう!」
少女と少年は互いに拳を向け、合図をする。
少年はスッキリしたような顔で叫ぶ。
「反撃のスタートだ!」
お互い振り返り歩き出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!