紫side
仕事中に無理を言って来たのか
いつものシャツなのに
汗をかいて、髪も乱れて
けど、瞳が一生懸命な様子で
俺に会いに来た
その瞬間
らんが走る様子をぼーっと見ていた俺の背中に手を回し
ぎゅっと抱いた
俺はずっと
この気持ちを求めていたのかもしれない
俺が笑ってみせると
らんは更に
強く抱いてくれた
らんは直ぐに仕事に向かってしまった
聞くと
と、笑いながら語った
申し訳なく思いながら、俺は嬉しかった
俺は、泣きたかったのかもしれない
俺は、誰かに大切にされたかったのかもしれない
答えは見つからないままだけど
少しだけ、前を向けた
警察に全部話したと
淡々と喋るみことを見ると
やっぱり、悲しくなる
深々と礼をした
弟にこんな事をするのは初めてだ
ダサいよな、怒ってるよな
俺だって、もっとらんみたいなかっこいい人になりたかったのに
その言葉を聞いて
俺はみことに抱きついた
みことの涙が
今にも零れそうだったから
みことが許してくれるのかは分からない
いや、多分永遠に許さないだろうし
家族を手放したくないという気持ちに変化は無いのだと思う
俺がどれだけ説得しても
俺がどれだけ約束しても
涙が溢れて、止まらなくなって
生まれて初めてみことの前で沢山泣いた
俺の人生が、いつから狂ってしまったのか
ゆっくり、思い出す
この先何が起こるのか分からなくて
怖くて怖くて仕方ないけれど
俺らなら、乗り越えられる気がする
何故かそんな確信があった
警察との話は、夜まで続いた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。