男の人が吹っ飛んだ衝撃でドレスがぶわっと広がって
私の目に入ったのは新郎風の白いスーツを身にまとって
少し濡れ髪でオールバックにしている恭平だった。
何回も何回もこうなった。
何回も何回も私がヘマして
何回も何回もみんなに守られて。
………… なあ、私ってなんも出来ないな。
片方の手で男の人を掴んで
もう片方の手で私の頭を撫でたり、電話しながら
てきぱきと動いてくれる恭平。
ありがたいのに、ありがたいのに、
罪悪感の方が勝ってしまう。
またみんなに迷惑かけちゃった、また守られた、私は普段その分を返せてるの?
みんなはきっと大丈夫だよなんていうけど、それはいったい、本心なの?
恭平と同じように白いスーツを着て
耳掛けやらオールバックやらしたみんなが
心配そうにこちらを見つめてくる。
久しぶりに出た怒りに任せた大声。
みんなが驚いてるのに、私の感情は止まることを知らない。
ずっとずっと地下で溜めてきた嘆きや悔しさが
キャパオーバーしてどーん、と出た感じ。
それだけいって私は崩れ落ちた。
ドレスが座ったはずみに円形に広がる。
けどもうそんなことどうでもよかった。
繊細なチュールのドレスも
新鮮でかっこいいみんなの新郎姿も
感情に任せた大声も
あの男の人がどうなったのかも
全部、全部、どうでもよかった。
目がどんどん閉じてく、
いいよ、もう、このままで。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。