頼まれた資料を整理して
経理の確認
数字ばかりを見すぎて
頭が痛くなる毎日だ
今日も無事仕事が終わり
パソコンを閉じる
予定通り早く帰れそうだ
オフィスの出口へ向かえば
後ろからドンッと叩かれる
北斗「お前置いてくなよ」
そんなことを言って
ふにゃっと笑う北斗
『ごめんごめん、忘れてた』
北斗「お前っ、忘れてたって」
呆れながら笑う北斗につられて
私も笑う
北斗「この後どーする?」
この流れから行くと
夜ご飯を誘いだろう
でも、これがいつもの流れだ
予定より早くあがれた日は
2人で夜ご飯を食べに行く事が
私たちでの中での
ルーティーンだった
だけど、樹が来てから
樹がいる毎日が当たり前になってから
早く終わった日でも
樹のためにそのまま
家に帰ることが多くなった
『ごめん、今日はやめとくわ』
私がそう言えば
決まって少し不機嫌になる北斗
北斗「最近全然行かなくなったな」
『そう?』
北斗「うん、断ってばっか」
あまり通っていない声に
黙り込む
北斗「あいつのために帰るの?」
樹のため、
そう聞かれてみれば
間違っては無いかもしれない
でも、それじゃあ
特別以上の関係になってるような気がして
そう思いたくない自分もいた
『そうじゃないよ』
はっきりと言い返す
気づけば会社の外にいて
北斗「まあ、いいや。じゃ、また明日」
『うん』
素っ気なく言葉を交わし
ぎこちないまま会社の前で分かれた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。