ゆっくりと話し始める樹の声に
きちんと耳を傾けた
樹「もう俺は鶯じゃない」
『もう戻らないの?』
樹「うん。」
気になるところも沢山あったけど
まずは樹の話を
黙って聞いた
、あいつらは腐ってる
、人間じゃない
、関わらない方がいい
、逆らえば誰であろうすぐ暴力
、1番トップは誰かも知らない
一気に喋りきったあと
ゆっくりと息を整える樹
『顔の傷、は?』
樹「抜けるって言った時の」
想像しただけで怖くなってやめた
『あっちにいる時は何したの?』
その質問に対して返事はなかった
『ごめん、』
それだけ言って
次の言葉を待ったが
次はなかった
『樹、?』
返事はなく
聞こえてくるのは
規則正しい寝息だけ
しばらくベットの中で考え込んだ
何か違う、
そうじゃない。
私が知りたかったことは
樹のこと、
鶯についての事なんかじゃなかった
確かにいた環境はわかった
でも、どこか違う
知りたいのは
もっと、君のことについてだった
難しいな
なんて思いながらも
隣から聞こえてくる寝息とともに
今日のところは目を閉じた
そうだ、ゆっくり。
もっとゆっくりでいいんだ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。