第108話

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2021/02/26 16:26



北斗side








目が覚めたのは見慣れない光景だった


あ、そっか。


俺昨日あなたの家に泊まったんだ


眠い目をこすり起き上がる


前までは当たり前のように泊まりに来てたけど


樹がきてからすっかり無くなってた


第2の家みたいな場所のはずが、、


顔を洗ったついでに寝室を覗く


すやすやと眠るあなたを見て少し安心した


昨日の夜のこと、


ここ最近元気がないのは明らかだった


でも、理由を聞いたところで答えないのがあなただ


それなら俺ができることはなんだ、


あなたの1番近くにいるのは


もう俺じゃないし、


急に家に行ってウザがられるのも嫌だ


そんなこんなで


結局、作ったおかずをタッパに入れて


あなたの家のベルを鳴らしていた


ゆっくりと玄関が開き


恐る恐る顔を出したのは


あなたじゃなくて樹だった



北斗「あ、あなたいる、?」



少しぎこちない空気感の中



樹「まだ帰ってきて、ない、」



なんて言葉が返ってくる


まだ帰ってない、?


一緒に帰ったはずなのに?


寄り道でもしてんのか、?


こんな時間に?ましてや1人で?



北斗「ごめん、どこ行くとか聞いてない?」



引っかかることが多すぎて


そう聞く俺に


また低い声で返ってくる



樹「仕事だと、思う」

北斗「仕事、?もう上がってるけど、」

樹「えっ、?」



初めてしっかりと俺の目を見た彼の顔は


明らかに戸惑ってた



樹「え、でも、あなた大きい仕事が入ったから、これから、遅くなるって、」

北斗「、?何それ、」



そこで何となく察した


あなたが嘘をついてること


最近元気がないのと関係あること



北斗「あ、これ。おかず、あいつ最近顔色悪いから、無理矢理でも食べさせて」

樹「あのっ、」

北斗「ん、?」



袋を渡す俺に


慌てたような声で声をかけてくる



樹「仕事なんてないんですか?」

北斗「え、?」

樹「仕事。あなたが言ってってたのって、、」

北斗「、多分ね、。」



それ以上は言わなかった


ここから先はあなたと樹のことだ


俺が関わることじゃない


この時の俺は少し強がっていたのかもしれない



北斗「じゃ、俺帰るんで、」



ぺこ、と頭を下げる彼を見て


そっとあなたの家を離れた


でもどこか胸騒ぎがして、


戻ってきた時にはもうそれは起こってた


玄関を開けた先には


泣いてるあなたが居て、


抱きしめてた、


樹が、樹が、って、


あいつのせいでそんなに泣くなら


俺にすればいいのに、


気づけばあなたの顔を上げて


唇を重ねてた。



北斗「樹、樹、うるさい。俺じゃそんなにだめ?」



あなたを困らせることになるだけってわかってたし


俺じゃないこともわかってた


それでも、


あなたの頭の中にあいつしか居ないことが


たまらなく悔しかった








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