第106話

105.
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2021/02/24 14:53





食器を洗ってくれている北斗に


散らかった部屋を


タラタラと片ずける


机の上には封筒が乗ったままだった


持っていかなかったな、


これでいいはずなのに


どんな形であろうと


離れることが出来た。


だから、目的は果たせたはずなのに


何も良くない。


1番大事なものがかけていて


1番大事にしていたものを


最後の最後に踏み潰した


自分の足で、


樹も鶯も、誰も悪くない


悪いのは私だ


初めから拾わなきゃ良かったんだ


ノリとか、勢いとか、


言ってしまえば


あの時の私の感情は


そんなとこだろう


それがいつの間にか本気になってて


いつの間にか離したくない存在になってた


くせに、


今日のはいくらなんでもないよ、


最低だよ、私。


どこにぶつけていいか分からない怒りを込めて


バン、と膨らんだ封筒を叩く



北斗「あなた、?」

『あっ、、ごめん。なに?』

北斗「なんのお金?」



私の手元を指さし


不思議そうな顔で聞いてくる



『樹のために貯めてたやつ、でも受け取ってくれなかった、』



バカバカしい、


あほらしい、


惨めすぎる自分に笑えてくる



『ほんとバカだなぁ、何してんだろ』



一度止めたはずの涙が


ゆっくりとまた頬を伝う


泣いてばっかりだ。


何も言わずに涙を拭ってくれて


何も言わずに優しく抱きしめてくれる北斗


そんなことされたらもっと泣けてくるのに



『ほくとっ、、』

北斗「ん、俺がいるから」



また北斗の服を濡らした


彼の匂いの中で泣き続けた



『樹に、会いたいっ、、』



北斗に言ったってどうにもならないし


樹は戻ってこない


ましてや、こんなこと北斗に言うのも


多分間違ってる


でも受け止めきれなかった


耐えきれなかった


どれだけ涙を流しても


その穴は埋まることはなかった



北斗「今日1人で寝れる?」

『うん。なんとか、』

北斗「あー、だめだ!俺が1人にさせれねぇわ」



そんなことを言って


少し照れたように頭を搔く



北斗「ソファー、借りてい?」

『うん』



そっか、今日からベットも1人だ


広くなるなぁ、


もう居ないんだな、











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