第5話

4.
11,629
2020/11/14 11:12





きちんと向き直り


彼と目を合わせる



『目、合わせて』



その言葉に対して


何も言わずに目を合わせる彼



『家、ないんでしょ』



そしてまた何も言わず


目だけをそらす



『ウチくる?』



自分でも驚いた


見ず知らずの男の人に


こんなことを言って


馬鹿なのはわかってる


でも自然とでてきた



「は、、?」



次はちゃんと目を合わせてくれた


ニコッと笑えば


まだ、驚きを隠せないような顔で


固まっている


彼の返事を待っていれば


後ろからプシュー、という音が聞こえた



『あ、バス、!!』



慌てて立ち上がり


荷物を肩にかける



『来るの?来ないの?』



私の問いかけに対し


「行く」と、小さな声だけど


確かに聞こえた



『ん』



ムクリと立ち上がる彼の手を引く


今にも出発してしまいそうなバスに


急いで駆け込む


2人分のお金をカードをかざして払う


ちょうど1番後ろの席が空いていた


彼の手を引きながら


後ろまで行く


彼を窓側にして


2人で並んで座った


チラッと彼の方を向けば


首のタトゥーを隠すように


手で覆っていた


そんな私の目線に気づいたのか


チラッと私を見てから


また目をそらす


そんなことをしていれば


私たちの前に座っていた人が


分かりやすく席を立ち


隣の彼を横目で見たあと


逃げるように席を変えた


やっぱりそうだよね


みんなそうやって避けていく


鶯だから


気づけば乗っている人が


チラチラ私たちのことを見ていた


でも、分からなくもない


私だって向こうの立場だったら


絶対にそうしていただろうから

















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