第4話

3.
12,121
2022/11/03 15:48





一瞬だけそれを見て固まった


彼の首筋には深く深く


そして濃く


鳥のうぐいすをモチーフにした


タトゥーが彫ってあった


それが何を意味するか


それは、この地域で有名な暴力団のマークだった


そのマークの通り「鶯」という名前で


この地域では知らない人はいない


全員、首にはこのマークが彫ってあり


鶯に関していい噂はひとつもなかった


街で見かけた女性を酷い目を合わせたとか


通学中の学生を襲ってボコボコにしたとか


1番トップの人はヤクザだとか


目を合わせれば殴られる


なんてことまで言われていた


実際につい先月


鶯の下っ端が人を殴り殺したことも


この辺では有名な話だった


その事件以降


この地域での鶯の評判はさらに悪くなった


関わらない方がいい存在


生きていないほうがいい存在


ただただ恐怖でしかない存在


だから、人々は皆


首のマークを見れば彼らを避けて行った


現に私もその1人だった


そして、たった今、この瞬間


そんな鶯の1人が目の前にいる


顔は傷だらけで


驚くほど弱っていた


私の目線に気づいたのか


どこか悲しそうな顔をしてから


また顔を伏せてしまった



「えっ、ちょっと」



慌てて彼と目線が合うように


深くしゃがめば



_「、、、、、だろ、」



ボソッ、と何かをつぶやく声が聞こえた



「ごめん、聞こえなかった」



そう言ってもう一度


耳を傾ける私に



_「だからっ、どうせお前も鶯のやつなんか助ける価値ないと思ってんだろ、?その目、もう見飽きた」



そう言ってまた頭を上げた


彼の顔は今にも泣きそうで


そんな目で私をじっ、と睨みつける


それでもその顔はどこか儚くて


もっとも、暴力団とは程遠い


そんな目をしていた











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