第115話

114.
6,213
2021/03/07 16:11





「おまたせ!」



そんな声に振り向けば


無邪気に笑うきょもの姿があった



大我「待った?」

『ぜんぜん』

大我「よかった」



なんて、普通に会話を交し


少しご機嫌な彼について行く


どうやら行きたいお店があったらしい


きょもが行くお店なんて


どんなに高級で上品なのだろうか、


なんて少し緊張しながらも


着いたのは至って普通のお店だった


2人で向かい合って席に着く



『久しぶりだね、2人でご飯なんて』



私のなんでもない一言に


そーだね、といつもの様に返す


ご飯に行くなんてことになれば


必ずあの二人が着いてくるようなものだ


だけど今日はお休み。


私ときょも以外は普通に仕事だろう



大我「あのさ、」

『うん、なに?』

大我「樹、今どこにいるの?」



彼から樹の言葉が出てくるのは


少し意外だった



大我「あ、この話しない方がいい、?」

『ううん、全然大丈夫。』



気を使わせるのも嫌だ


てか、実際にもうなんとも思ってないし、


、、、また強がってる



『どこにいるかはわかんない』

大我「少しも?」

『うん。何も知らない。てゆうか、別に恋人でもなければただ一緒に住んでただけの人だし、』



口が勝手に動いていた



『もう関係ないよ、どうも思ってない。どうせあっちも忘れてるでしょっ、』



鼻で笑いながらそう言って


きょもの方を見る



大我「あなたさ、わかり易すぎるよ」

『え?』



急に何を言い出すのだろうと、


彼の言葉を聞き返す私に


ぐい、と体が近づく



大我「素直になったら?好きなんでしょ、樹のこと、」



そんなストレートすぎる言葉に


何も言い返せなかった


ただただ彼の顔を見て固まったまま


それからそっと目を逸らし



『好きだよ。大好き、今でも』



とだけ言った


でもそれが全てだった


意味もわからずこぼれそうになる涙を堪え


にこ、と笑ってみせる



『でももう居ないもん、会えないもん、私が酷いことしたから、』



深く深呼吸をしてから



『私が全部壊しちゃったからっ、、』



なんて吐き出した時にはもう遅かった


堪えきれなかった涙が


ポロポロと頬を伝った


ただの飲食店で場違いなのはわかってるけど


やっぱり止めれなかった



大我「うん、それでいいよ、」

『ごめんっ、』

大我「なんで謝るの!泣いてくれた方が安心するから、我慢してるの知ってたし、」



そう言ってくしゃくしゃ、と頭を撫でる


まるで子供をあやすようで


少し安心した


樹もこんな気持ちだったのだろうか


答えなんかもう聞けないけど、


そうなら少し嬉しい自分がいた











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