お風呂から上がりリビングへ行けば
テレビの前にはもうスタンバってる樹
そんな樹の横に腰を下ろした
樹「ミルクティー、入れといたよ」
『わ、ありがとう』
そんなことまでしてくれるようになったのかと
感心したままフリーズする
樹「なに?」
『いや、そんなことできるようになったんだね』
樹「バカにしてる?」
『嬉しいの』
少し親目線になりながら
いつもと同じように
少し雑に頭も撫でておいた
樹「子供扱いしてくんのやだ」
『人としてはまだまだ未熟だからね』
程よく温かいミルクティーを口に含む
お風呂上がりだけど
ホットでも特別においしかった
ポチポチとリモコンのボタンを押す樹
『見たいのあるの?』
樹「特ないけど。あなたは?」
じゃあそれ、と言って
また前と同じ俳優さんの出てる映画を指す
樹「えー、やだ」
『なんでよ』
樹「嫌なの!!」
何となく見え見えな彼の気持ちに
面白くなってしまう
樹「ホラーとかは?」
『私あんまり好きじゃない』
そう返す私に
何か面白いものでも見つけた子供のような顔で振り返る
樹「え、まさか怖いとか?」
『だったらなに!』
少し強がっては見るものの
小さい頃からのトラウマはなかなか消えないものだ
声を出して笑う樹に少し拗ねる
別にいいじゃん、
『笑いすぎ』
樹「逆にありじゃない?今日ぐらい」
まさかの提案に
結構ガチめに否定する
『無理無理』
樹「いいじゃん。1本だけ」
『寝れなくなる』
樹「朝まで抱きしめとくから」
私がOKを出さないまま
再生ボタンを押す
『樹、』
樹「かわい、おいでここ」
『今日だけだからね』
いつもは隣同士なのも
今日は樹の前に座る
すぐに回ってきた腕にどうするのが正解かわからず
触れないでおいた
今日はホラー映画だから
だから、少しは甘えてもいいよね、
今日だけだし、
『樹、』
樹「ん?」
『ちゃんと後ろにいてね』
樹「いるよ」
後ろから聞こえる声は
いつもよりもずっと安心できた
真っ暗な画面から始まった映画に
覚悟を決めて視線を移した
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。