第99話

98.
6,144
2021/02/17 15:25





休みの日は無理やり予定を作った


ここまでやる必要があるかどうかも


これで合ってるのかも


何が正解で


何が樹のためかが分からなくなってきた


ただ、樹に何かあったら、


って考えたら、


一緒に笑い合う一瞬でさえも


ダメなような気がしてならなかった


鶯に言われてから今まで


時が過ぎる度に焦りが込上げる


早くしなきゃ、


早く樹と距離を置かなきゃ、


早く樹に伝えなきゃ、


早く、早く、


そう思う度、そんなことに必死な自分が嫌になる


したくないのに


体は感情に乗っ取られていくようだった



樹「今日休みじゃないの?」



洗面台で髪を整える私に


パジャマ姿のままの樹が顔を出す



『ごめん。予定入った』



正しくは、入れた。


だけどそんなことはどうでもいい



樹「ふーん」



そんな樹の曖昧な相槌で会話が終わり


なんとも言えない気まずさに


ドライヤーのスイッチを入れる


鏡越しには樹の姿が写ったまま


ドライヤーを使った私がバカだった


私に近づき覆い被さるように抱きしめ
てくる樹



『ちょっと、離れて。やりにくい』

樹「誰」



そんな私を無視するかのように


明らかに低い声が


うるさいドライヤーの音に混ざって


耳元で響く



『友達だよ、ただの』



ドライヤーをしまいながら


そう答える私に


一向に離れてくれない樹



樹「だから誰って」

『誰でもいいじゃん』



強く言うつもりなんてなかったのに


色んな感情がいり混ざり


樹に当たってしまう


そんな自分も大嫌いだ


大きなため息を吐いたあと


洗面所を出ようとする私の腕を


樹が掴んでいた


そのまま体が近づき


唇が触れる


完全に油断していた



樹「待ってる、早く帰ってきて」



こんな時に、


こんなこと、


許されるわけないのに。


恋愛経験の圧倒的に高い彼に


見せつけられている気分だった


ずるいなぁ、



『うん。行ってきます』



自然とそう返し、


カバンを持って家を出た


予定なんか入れなきゃ良かった





















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