第90話

89.
6,269
2021/02/06 15:12





バスをおりた先、


もう分かる。


鶯であろう人達がチラチラとこちらを見ていた


ほんとに、映画かよ


よく懲りないな


こんなやつほっとけばいいのに


でも知っている。


私、ではなく


彼らの目的は樹と私の関係だということを


納得していないんだろう



「今時間ある?」



もう顔見知りかのように話しかけてくる彼らに


居心地の悪さを感じながらも


鶯にしては丁寧な言葉遣いに


少し違和感を覚えた



『ごめんなさい。急いでるので。』



小さく頭を下げ


先を行こうとする私を


何も言わずにガタイのいい男の人が止めた



「俺らのこと、あんまり舐めんといてくれる?」



舐めてるつもりなんてサラサラない


ただ、避けているだけ


それが抵抗だと思ったんだろう


何も言わずに目だけはそらさなかった


暗闇の中でも見えるその細い目は


いかにも、と言った感じだ


樹が彼らと重なるところなど全くと言っていい程なく


全く違う生き物にさえ見えた



「もういいよ。離してあげて」



聞き覚えのある声に


顔を向ければやはり彼女だった


きっと私の居場所に


樹からした私の存在に


1番気に入っていないのは彼女だろう


こんなにあっているのに


未だに名前すら知らない


今日は聞いて帰ろうか、


なんならどうゆう関係だったかまで聞いてもいいと思った


だって、私は樹のなににでもないのだから


ただの同居人。


それぐらい聞いたっておかしくは無い



「今日はなんでいるか分かる?」

『いえ、』



小さく首を振った後


彼女の目線から目を離したのが間違いだった


気配を察知した時にはもう遅く


後ろから勢いよく口元を抑えられ


抵抗する隙もなく


全身の力が抜けた


そうだった、彼らは鶯なのだ。


こんなのへでもない


最後に聞こえてきたのは


数人の笑い声と車のエンジン音だけだった


































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