第73話

72.

6,888

2021/01/14 16:15






いつも通り。


洗い物を済ませ、お風呂に入る


洗濯物をたたみ、そしてしまう


あとは寝るだけ。


明日は休み。


こんな絶好の娯楽チャンスを逃す訳にはいかない


今日はベットではなくソファーへ向かう


リモコンを適当に操作しながら


今から見る映画を選んでいれば



「あなた、？」



と後ろから樹の声がする




樹「珍しいね。寝ないの？」

『明日休みだからさ、映画でもみよっかなって』

樹「明日、仕事行かない？」

『行かないよ』



そう言いながら樹の方を向けば


思った通りの顔をしている



『嬉しそうな顔しないの』

樹「だって嬉しいもん」



子供みたいな笑顔で笑う樹に


見る？、なんて言って隣を指せば



樹「見る！」



なんて言って飛びつくように隣に座る



『見たいのとかある？』

樹「あなたが好きなのでいいよ」



彼の言葉に甘え


好きな俳優さんが出ている映画を選んだ


それは淡く切ない恋愛映画で


悪くないな、なんて思いながら


再生ボタンを押した



樹「こうゆうの、好きなの？」

『ん？』

樹「恋愛とか」

『違う違う。俳優さん。この人！かっこよくない？』



そう言って勢いよく振り向けば


思ったよりも近くに樹の顔があってびっくりした



『あ、ごめん』



サッと顔を引き


画面に視線を戻す


何故か少しだけ気まずくなって


隠すようにクッションに顔を埋めた


傍から見れば馬鹿なんだろうな


こんなしょうもない自分に笑えてきて


何も考えず映画にだけ集中した