第34話

33.
8,017
2020/12/05 12:07





今日も帰れば樹が待っている


心を弾ませている自分に


少しだけ叱り付ける


複雑な関係にはなりたくない


それなりに恋愛経験だってある


だから、何となく距離感の掴み方ぐらい


分かってあるつもりだった


そんなことを考えながら


家までの道をとぼとぼと歩く


今日は遅番だったため


時間が随分と遅くなった


それに冬だからか相変わらず空が真っ暗だ


月を見上げ少し黄昏れる



「こんにちは、おねーさん」



静かな暗闇の中に急に響いた声


驚いてあげていた顔を下げる


首に鶯のマークをつけた男の人が3人


私と目が合うと


にやっと笑い近づいてくる



「こんにちは」



恐怖から足がすくんで


無意識に後ずさる



「そんな怖がんなよ」



そう言って私の肩を抱き寄せる


ただただ怖くて


息もまともにできない程だった



「騒いだら殺す」



それだけ言われ


強引に狭い路地の間に連れていかれる



「そんな泣くなよ」

「俺たち怖くないからねぇ」

「よしよし」



頭の撫でる手は


汚くて気持ち悪くて


とにかく気分が悪いものだった



『な、んですか』



恐怖で押しつぶされそうになる中


どうにか言葉を繋げる



「お前さ、あいつとどうゆう関係なの?」

『え?』

「樹だよ」



どうゆう関係


そんなの分からない


私にだって


表面上は助けた人と助けられた人


本当は、なんだろう


やっぱり変な関係なのは確かだ


でも今はそんなことどうでもいい


彼らが1番怒らない答えを


どれが1番安全に返してもらえるか


それしか頭になかった








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