第112話

111.
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2022/06/08 12:07





北斗side






コンビニに寄ってからあなたの家へ


さっきからあなたから離れようとしないジェシー


あなたもウザがってるようで


本当は嬉しいのが見え見え


ジェシーもジェシーなりの慰め方なんだろうと思った



大我「おじゃましまーす」

優吾「しまーす、」

「どうぞー、」



リビングにはもちろん誰もいない


そんな静まり返った部屋の電気をつけ


ドサ、と荷物を置くあなた



ジェシー「ガチじゃん、」

慎太郎「ガチだね、」

「ガチだよ。ほんとにもういない」



さっきから平気そうなふりが下手なあなたさん


なんでそこまでして強がるかな、


好きなら好きって言ってくれた方が諦めがつくのに


泣きたいならもっと泣けばいいのに


俺らの前でぐらい無理に笑わなくてもいいのに



「よし、私なんか作るね」

北斗「手伝う、」

「助かる」



そんなこんなで着々と準備が始まる


なんだか久しぶりで懐かしい気がした



北斗「みんなに全部言うの、?」



隣で手を動かすあなたにそう聞く



「わかんない、」



なんて、か弱い声でそれだけ返ってくる



北斗「ずっと隣にいるから」

「なんで今そんなこと言うの、」

北斗「え、?」



あなたの方を向けば


泣きそうな顔で「ばか、」とだけ言って


俺の事を少し強めに叩く


そんなあなたを見て思った、


ほんとに好きなんだなって、


樹に会いたくてたまらないんだろうなって、


俺じゃダメなんだなって、


やっぱり樹のことが大好きなんだろうなって、


そんな彼女を見ても


諦めたくないと思う俺は相当諦めが悪いんだろう


もういないのに、


どこにいるかもわかんないのに、


あなたの頭の中は樹でいっぱいなんだ


こんなに近くにいる俺より、


たった今、隣にいる俺より、


それがたまらなく悔しかった



北斗「あなた、」

優吾「こっち準備おっけー!!」

大我「あとご飯だけだね」

慎太郎「うわぁ、お腹空いた」

ジェシー「え!?うま!?」

「ちょ、つまみ食い禁止だからっ」

慎太郎「うわ!ほんとだ!めっちゃ美味しい!!」

「だからダメだって!!」



俺の声をかき消すようにして


キッチンに乗り込んでくるみんなを


急いで追い出すあなた



「あっぶな、全部なくなるとこだった」



一瞬にして狭くなったキッチンが


また2人だけになる



「北斗、?」

北斗「あ、なに?」

「手、止まってますけど??6人分作るんだからね!」

北斗「はいはい、わかってるよ」



そんな俺に


クスクスを笑うあなたを見て


今じゃなくてもいいと思った


とりあえず隣にいよう


こう見えて誰よりも脆いから








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