第118話

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2022/06/23 13:55





北斗「え、?、じゃねーよ」

『いや、だって、』



混乱したままの私の肩を掴み


向かい合わせる


北斗は背が高いから


見上げるように顔を見るところは


樹と同じだった



北斗「だーかーら!俺を振っててって言ってんの!」

『え、振るっていうのは、』

北斗「そう、だーいふ前の告白の件ね、」



ずっと気付かないふりをしていた


わかってたし


覚えていた


でも、樹のことでいっぱいいっぱいで


忘れてる振りをしていた


でも、こんな面と向かって言われたら


逃げるにも逃げれない



北斗「お前忘れてただろ」

『ごめん、』

北斗「まあっ、いいけどね」



いつも通りへらっ、と笑う彼を見て


逃げちゃダメだ、と思った


ちゃんとひとつずつ整理していかなきゃ


逃げてばかりはダメだから



『北斗、』

北斗「ん?」

『こんなこと聞くのはさ、おかしいと思うんだけどさ』

北斗「うん、いいよ」

『まだ好きでいてくれてるの、?』



少し視線がずれ、また戻る



北斗「好きだよ。ずっと。」



私の目を見てそう言ったあと


なんか恥ずかしいな、なんて言って


照れ始める



『北斗、』



ゆっくりと顔を上げた北斗の目をじっと見つめる



『ごめん。』



その3文字に


溢れるぐらいの気持ちを込めた


こんな私を好きになってくれたことも


樹のことが好きって知っても横にいてくれたことも


樹が好きな私を認めて


真正面から向き合おうとしてくれたことも


ごめん、なんて言葉の中に


見えないありがとうが沢山あった



北斗「うん」



さっきよりもくしゃっ、と笑って


雑に私の頭を撫でる



北斗「よし、帰るか!」



そう言ったあと


帰り道を歩きだす



『北斗、!!』



その背中を呼び止めた


不思議そうに振り返る北斗



『ありがとう、!』



それからさっきの北斗に負けないくらいの


笑顔を作った



北斗「お前さぁ、」



そんな私を見て何故か呆れたように笑う



北斗「せっかく諦めついたと思ったのにさぁ」

『え?』

北斗「バカが」




急に吐かれた暴言に固まる


バカ、?


え?どの辺が、、?


馬鹿だと思わせるようなことをしただろうか


ありがとう、って言っただけなのに、


どうやら今の私は馬鹿だったらしい



北斗「おい、!」

『あ、ちょっと待って、!』




小走りで北斗の所まで行き


隣に並んだ


今日のこの街は


なんだか少し甘酢っぱい






















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