『今日こそは仲良くなって』
北斗「だから無理だって」
『最初から決めつけないの』
北斗「え〜、」
そんな会話をぶつくさとしながら
家までの道を歩き
玄関をそっと開けた
それと同時にいつものように
彼の体が私を包む
樹「あなた〜!おかえ、、り、」
ようやく北斗に気づいたのか
世界の終わりみたいな顔をしながら
そっと私から離れる
『ただいま樹』
樹「うん、」
『ごめんね、急に北斗呼んじゃって』
ちらっと北斗の方を見たあと
「大丈夫」と小さな声が返ってくる
北斗「仲良さそうじゃん」
それだけ言うと
私と樹の横を通り過ぎて
自分の家のようにリビングへ入っていく
後に続きキッチンに立つ
適当にご飯を作り3人で食べた
もちろん会話はほぼない
あー!この時間が一番嫌いだ
早く仲良くなってくれぇ
そんな願いは儚く消えさり
そのまま食器を洗う
そして本題だ。
『よし!やるぞー』
北斗「今日中に終わればいいけどな」
2人でパソコンに向かい合い
カタカタとキーボードを叩く
消しては入力しての繰り返し
細すぎる訂正に多少キレながらも
少しずつ進める
これをもし一人でやってたと思うと、
恐ろしい
目の前にいる北斗が神にさえ見えた
北斗「なんだよ、そんな見られたらやりにくいだろ」
『いや、改めて有難いなって』
北斗「今度アイスな」
『いくらでも』
そう言って軽く笑い合いながらも手を動かす
樹「あなた、」
「ん?」なんて言いながら
顔をあげれば
テレビに飽きたのかソファーから離れ
少し寂しそうな顔で私の顔を見る
『もう寝る?』
樹「あなたは?」
『まだ、かかるかな』
樹「じゃあ、寝ない」
そう言って私の横に座ると
少し近づくように椅子を寄せる
そんな樹に頬を緩ませる
『先寝ててもいいよ?』
樹「いい」
『つまんないよ?』
樹「いいの」
樹がいいならいっか
こっちを向く北斗と目が合い
何となく逸らした
変な距離感
そんなことを思いながらまた
キーボードを打つ手を速めた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。