第19話

18.
9,686
2020/11/20 16:45





家に帰ってから


樹は一言も喋らなかった


傷の手当だけすれば


そのままお風呂へ行ってしまう


樹の後に私もお風呂に入り


リビングに戻れば


ソファーの上で座りながら


険しそうな顔をする樹


そんな樹の横に座った



『気にしてる?さっきの、』



チラッと隣を見れば


さっきと同じ表情で何も言わないまま



『それなら大丈夫だよ、私怖くないし、樹はもうあの人たちとは違うんでしょ?だからっ、』



「だから気にしないで」なんて


言おうとすれば


そのまま正面から抱きしめられた



樹「俺が大丈夫じゃないの」



体がピッタリとくっつく



樹「あなたに何かあったら、俺が嫌」



そんなストレートな言葉に


不覚にもドキッとしてしまう



『そんなこと言ってくれるの?』

樹「うん」



そう言って


そっと体を離すと目が合う



樹「だって、命の恩人だから」



そんな言葉に


思わず笑ってしまう



『大袈裟だよ』

樹「そんなことない」



彼があまりにも真剣な顔で言うから


戸惑いながらも


少し照れ隠しをする



樹「俺からしたらあなたはすっげぇ大切な人」

『私が?』

樹「うん」

『そっか、そんな存在になっちゃったか、』

樹「いや?」



顔を覗く樹に


「全然」と返す


知らない間に樹の中でそんな存在になっていた


大切な人、か、


なんだかくすぐったくて


ムズムズする


そんな感情を隠すように


ケラケラと笑えば



樹「だから、次は俺が借りを返す」



ニカッと笑いながら


そんなことを言う樹を見て


心の底から温かくなった


力強い言葉に



『ありがとう』



なんて言って返せば


また笑って抱きしめてくれる


2人なら大丈夫


そんな思いがより一層強くなった気がした







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