第61話

60.
7,447
2020/12/31 16:46





おも、


何かが乗っかているような感覚がして


目が覚めた


起きてみれば


私のお腹の上を思いっきり陣取る樹の足


重い、とにかく、


そんなことを思いながら隣を見れば


すやすやと眠る樹の顔があった


小さな子供みたいに


幸せそうに眠る顔


そんな私の頭の中には昨日の記憶がよぎる


樹のあんな顔、あんな姿、


見るのは初めてじゃないはずなのに


何故か頭から離れなかった


暴力団、と言う事実を避けながら


もう違う。


なんて言葉で片付けていた私にとって


現実を突きつけられた瞬間でもあった


今、目の前で眠る彼は


元暴力団で


あの、鶯の一員で


元はあんな奴らと同じだったんだ


考えちゃいけないことはわかってる


だけど、それでも、


そんなことを考えてしまう自分がいた


樹はもう違う。


とか、


樹は本当は違う。


とか、


そんな簡単に信じていいのだろうか


なんて疑問が浮かんできてしまう


、知らねぇくせに?


なんて、昨日樹が言った言葉


たしかに知らない


出会ってから


まだ、数えるぐらいの月日しか経っていないのに


こんなに信じきっていいのだろうか


いつか、急に鶯に戻って、


その時に私のことを目につけ


鶯の遊び道具にでもなったらどうしよう


あるわけないのに


そんな事ばかりが頭に浮かぶ


樹の愛情表現を


こんなにも信じていいのだろうか


彼にとって普通だとしたら?


私なんて今まであった女性と同じだと思ってたとしたら?


もしそうだったら


私のとんだ勘違いだ


普通を教えてあげる代わりに


私は樹を教えて欲しかった



「あなた、」

『えっ、?』



急に名前を呼ばれて


急いで顔を上げれば


思ったより近くに樹の顔があった



樹「ふふ、おはよ」

『あ、おはよ、』



いつもとは違う冷静な樹に


戸惑いながらもそう返す


そんな私を見てまたケラケラと笑うと


私の頬を両手で挟む



樹「なーに朝から悲しそうな顔してんの」

『別に、してないよ』

樹「いや!絶対してた!」



朝から無邪気な樹に


こっちまで笑顔になってしまう



『樹、』

樹「なに?」

『おはよ。』



ニコッ、とだけ笑い


ベットからそっと降りた



樹「え!何今の!」



元気よく笑う樹の声が響く


幸せすぎる朝だ


誰かが隣にいるのは


やっぱりどこか胸が高鳴る








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