第91話

90.
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2021/02/07 16:03





数人の話し声と共に


うっすらと意識が戻る



「あ、起きましたよ」



1番近くにいた男がそういったのを合図に


その場にいた人全員がこちらを向く


そんな中私は一番奥にいる


あの女の人だけを見ていた


部屋には物が散乱していて


たまり場、という言葉が合うような場所だった


外はまだ暗い


一日たったとは考えずらい


きっとまだ同じ日だろう


その彼女はゴミを見るような目で私を見たあと


コツコツ、とヒール音を鳴らしこちらへ来る


そして、なんの前触れもなく頬を思いっきり叩いた



「うざいって言ってんじゃん」



ぐい、と服を掴まれ


重い頭をあげる


これからどうなるのだろう


このままここで殺されるのかな?


樹を残したまま死ぬのは嫌だな、


北斗にも怒られるし、


きょもにも悪い、


手が軽く固定されてるだけで


口と足は自由だった


抵抗とすればいくらでもできた


でもしなかった。


最悪の場合を考え、最後の抵抗として彼女を睨みつけた



「何その目、」

『殺すんですか?』



私の質問に彼女を含め周りの聴衆たちもケラケラと笑った



「なに?殺して欲しいの?」

『いえ、』



しょうもない煽りに


それだけ言って下を向く私の顔を


戻すように引き上げる



「なんであんたなの?」



何も答えなかった


ただ少しの沈黙が流れた



「なんか言えば?」



そんな彼女の言葉に


私の返事はすぐに出てきた



『樹は私にとって大切な人です。』



彼女の気分を害することはわかってた


納得いかないことも、怒ることも、



「そうゆうのがうざいんだよ!!!!」



勢いよく飛ばされた体は


後ろにあった棚に勢いよくぶつかった


ぶつけた部分はジンジンと痛む


突き飛ばしたあとも私を睨みつけながら


興奮した体を上下に揺らしながら息を整えていた


落ち着いてきた彼女は


私を見たままゆっくりと口を開く



「樹を消されるか、その前に自分から離れるか、どっちか選んで」



唐突な選択肢は


数秒で答えを出せるような問ではなかった


















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