ひたすら走った、
走って走って家へ向かった
興奮してることは確かだった
樹に会って、
久しぶりに樹の体温を感じて、
待ってて、なんて
とにかくじっとしていられなかった
感情がたかぶって
頭を整理して、自分を落ち着かせようと
立ち止まって息を整える
それから北斗に電話をかけた
___北斗「お前なぁ、こんな時間に電話かけてくるとか、」
『樹に会った、っ、』
いつも通り話し始める北斗の言葉を
途中で遮り呼吸を整えながらそう言えば
少しの間沈黙が流れる
___北斗「樹って、」
『うん、会ったの、樹に会ってっ、それからっ、、!』
___北斗「わかった、わかったからっ、一旦落ち着け」
スマホから聴こえてくる
聞きなれた北斗の声に
言われた通り一旦息を整える
深呼吸を何回も繰り返した
___北斗「すぐ行くから」
『うん、』
___北斗「待てる?」
『待てるよ、それぐらい』
___北斗「ん、じゃあ」
『うん、ありがと』
そんな会話を最後に
無機質な音が響いた
それから急いで家に帰った
カバンを机の上に雑に置き
ソファーの上に腰を下ろした
とにかく心配で仕方ない
樹は大丈夫だろうか、
ほんとに置いてきて正解だっただろうか、
今頃怖い目にあってるんじゃないか、
本当はここに戻ってくるなんて嘘なんじゃないか、
そんなことばかりが頭をよぎる
もう一度あの建物に行こうか、
でも言ったところで何が出来る、
何も出来ない。
今は樹を信じて彼を待つのが1番正しいのか
とにかく落ち着く事が出来ないまま
淡々と時間が過ぎていった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。