第103話

102.
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2021/02/21 17:52





樹「は?」



そりゃそうなるよね、


急にこんな無理やりさ、



『もう一緒にいれない、』

樹「えっ、なんで、?」



戸惑う彼を無視して


近くの棚を開ける


一応のために用意しておいた封筒を取り出す


少しでも役に立てばいい


最後にしてあげられることはこれぐらいだから



『はい、』

樹「は?なにこれ」

『少しの間生活できるぐらいは入ってる』

樹「は?待ってって、どうゆうこと?」

『だからそのまんま』



あとは荷物のまとめ、


今は顔を見られたくなかった


こんなことになるなんて思ってなかった


荷物を急いでまとめようと


クローゼットに手を伸ばす



樹「何してんの?」

『荷物まとめるの』

樹「は?ちょっと待ってって、。ちゃんと話して、」

『話すことなんてない』



その後も樹の言葉を無視して


クローゼットの中を漁る



樹「あなたっ!!!」



気づけば肩を掴まれ


そのまま隣にあるソファーに押し倒されている



『樹っ、、離してっ!!』

樹「ちゃんと言わなきゃわかんねぇじゃん」

『樹ってば、!!』



必死に抗うが


細身のくせに力だけはしっかりとある


押さえつけられたからだは


なんの抵抗もすることが出来ない


私を押さえつけたまま


息を整える


2人とも冷静にじゃないのは明らかだった



樹「俺、そんなに邪魔だった?」

『、、、』

樹「いない方がいい?」

『、、、、』

樹「ねぇって、なんで黙ってんだよ」

『ごめん、、』

樹「意味わかんねぇ」



呆れたように笑いそれだけ言うと


すっ、と体が離れる



樹「俺バカじゃん、勝手に勘違いしてさ、」



2人の呼吸音だけ。



樹「そんなに邪魔なら言ってくれればよかったのに、」



散らかった部屋を進み


リビングの扉の前で止まる


いつ溢れ始めたか分からない涙は


最後になるかもしれない樹の姿までも


歪ませる



樹「大好きだよ。でも俺だけだね」



最後の最後に、


なんでそんなことを言っていくのだろう


何十回と聞いてきた言葉なのに


今になって気づく、


ああ、なんでこんなに馬鹿なんだろう


急いで追いかけた頃、


彼はもう届かない場所にいた




















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