第48話

XXの実力 ⅩⅡ
95
2020/06/07 05:48
成瀬なるせ 冴羅さら
あっ!見てみて~!このお花、なんていう名前か知ってる?
四月一日わたぬき 柊也とうや
え?それはシロツメクサ……クローバーの花だと思うけど。
成瀬なるせ 冴羅さら
そうそう正確!
中央広場で合流した冴羅たちは今、花園エリアに来ていた。

柊也君によると、家族エリアでユリちゃんとは遭遇していなくて、その上中央広場にユリちゃんが来たということもないんだって。
そして、自然エリアは冴羅が爆破した。
だからわくわくエリアか花園エリアの二択で、花園エリアを選んだんだ。

早くユリちゃんに会いたいなぁ。
成瀬なるせ 冴羅さら
ねぇ、知ってる?クローバーの花言葉って、「復讐」なんだよ。
急に落ち着いた声音になったことに驚いたのか、それとも話の内容か、柊也君は少しだけ瞳を揺らした。
四月一日わたぬき 柊也とうや
物騒な花言葉だね。四つ葉のクローバーとかあるくらいだから、縁起の良い花言葉かと思ってた。
成瀬なるせ 冴羅さら
うん。冴羅も最初はそうだった。
そう言いながらも、ユリちゃんを見つけるべく辺りを見回しながら歩く。
するとまた、一つの花に視線がいった。
成瀬なるせ 冴羅さら
あっ、あのお花はなんていうお花だと思う?
四月一日わたぬき 柊也とうや
あれは……ハナズオウ?
冴羅が少し薄い紅色の花を指差すと、柊也君は少し考えてそれに答える。
成瀬なるせ 冴羅さら
せーかい!柊也君博識~!
四月一日わたぬき 柊也とうや
それは成瀬さんも一緒だよ。
成瀬なるせ 冴羅さら
えへへ、ま~ね!お花は大好きだから!
四月一日わたぬき 柊也とうや
あぁ……だから花言葉にも詳しいんだ。あ、じゃあさ、ハナズオウの花言葉は何ていうの?
柊也君が少しだけ期待した眼を向けてくれる。
あまり人の話に興味を示してくれなさそうな子だから、ちょっと嬉しかったり。
成瀬なるせ 冴羅さら
えっとね~花言葉は確か、う
ユリ
「裏切り」
突然話を遮られて、驚きながらも声の主を求め後ろを振り返る。
……そこには、ニコニコとユリちゃんが立っていた。

柊也君は警戒心を強めて後ろに下がり、冴羅はスケッチブックを開き鉛筆を握った。
成瀬なるせ 冴羅さら
もぉ、ユリちゃんったら、冴羅の台詞取らないでよね~!
ユリ
あはは!ごめんねぇ~、つい言っちゃった!
ユリちゃんは見る限り皮肉無しに言ったので、とりあえず怒るのはやめとする。
ユリ
あ、ちなみに!ハナズオウって、「ユダの木」とも言うらしいよ~!
四月一日わたぬき 柊也とうや
ユダの木……?
ユリ
うん。「最後の晩餐」……って言ったら、分かるかな?
底の見えない笑顔で、ユリちゃんはそう言った。


『最後の晩餐』

レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた作品の一つ。
イエス・キリストと12使徒が集まり、その名の通りキリストの最後の晩餐が行われている場面。
「12使徒の中の一人が私を裏切る」とキリストが予言した時の情景が描かれている。

その“裏切り者”が、キリストの言う通り、12使徒の「ユダ」という人物である。
ユリ
まっ、それより今は私の暗殺だよ~?
話を振ったのはあなたですけど、と溜息を吐く柊也君を横目に、冴羅はスケッチブックに閃光弾を描く。
そして閃光弾を具現化させ、柊也君とアイコンタクトを取り頷き合う。
成瀬なるせ 冴羅さら
やぁっ!
閃光弾をユリちゃんに向かって投げ、その閃光弾が光を放っているうちに元いた場所から移動し柊也君の能力で冴羅たちの姿を消す。

閃光弾が発光を終えると、ユリちゃんは目をゴシゴシと擦っていた。
ユリ
あ~眩しかったぁ!……って、あ!!隠れられたぁ~!!
ユリちゃんはプンプンと頬を膨らませる。

その間に、冴羅は手榴弾しゅりゅうだんや拳銃、ナイフを具現化、柊也君はそれをユリちゃんの視界から消す。
ユリちゃんの色覚を操っているだけなので、柊也君は普通に見えているから大丈夫。
四月一日わたぬき 柊也とうや
……成瀬さん、ユリは恐らく足元の草の音を聞き分けて避けてくるだろうから、動かない方が良いと思う。もしユリが突っ込んで来たらまた閃光弾放って錯乱させよう。
柊也君が小声で冴羅に耳打ちし、冴羅はそれに頷く。

……さぁ、ユリちゃん。
その実力、冴羅に見せてよ。

そうしてユリちゃんに拳銃の銃口を向け、少しだけ下唇を舐めた。

プリ小説オーディオドラマ