第35話

XXの真偽 ⅩⅩⅢ
88
2020/04/25 15:11
青峡高校で笧三を待つこと数分。
何となく遠くを眺めていると、遠くの空に人らしき影が現れた。
地図を見ると、恐らくあそこは駄菓子屋の上空だ。

その影は数秒後に下へと落ちたので、あれは呉が大きくジャンプしたのだと知る。

恐らく俺たちの居場所を気付かれた。
国木田くにきだ 達也たつや
こちら国木田。敵チームの呉が上空から俺らの位置を確認した可能性大。
俺がトランシーバーに話しかけると、ザザッという雑音と共に笧三の声が聞こえた。
笧三しがらみ たく
『一応、まだ作戦通りでいく。多岐はサポートを更に念入りに頼む。』
多岐たき 朱音あかね
『了解。』
俺らの会話はどこかの映画で見たような諜報員たちの会話みたいで、きっと辻が聞いたら「格好いいですね!!!!!」とか大声で言ってきそうだなと思った。
多岐たき 朱音あかね
『あ、後。青峡高校に向かう音が笧三を抜いて二名いることが確認できた。恐らく笧三よりも先にその二名が着くから、国木田は用心しといた方が良いかも。ちなみに青峡高校から見て西から来てる。』
国木田くにきだ 達也たつや
分かった。笧三が来るまで耐える、の方向で良いよな?
笧三しがらみ たく
『それで良い。俺もすぐ行く。』
国木田くにきだ 達也たつや
了解。努力する。
そこでまたブツッと音が途切れる。

作戦開始で動き出した笧三よりも先にここへ着く可能性がある‥‥‥のはやはり敵チームは合流して駄菓子屋にいたか、それよりも先に誰かが俺の近くにいたかの二択。

笧三がいた場所よりもはるかに駄菓子屋の方がここと近いし、決して笧三が移動速度を緩めたわけでもないからだ。

笧三は東の方角から来るから、敵チームとは真反対。
だから‥‥‥そうだな。西の方角に警戒を強めよう。

そう思って、俺は西の方角に体を向け─────
くれ 葉月はづき
とりゃぁ!!
国木田くにきだ 達也たつや
っ‥‥‥!?
ドン、と鈍い音と共に聞こえたのは刃物の音。
突然のことで少し理解に遅れたが、どうやら呉さんが俺に突撃してきたらしい。

何故多岐からの連絡が来なかった?
何故刃物の音がした?
何故、何故‥‥‥

と頭が混乱しながらも、俺は結界を作る。
すると、脇腹に激痛が走った。
恐る恐る自分の脇腹を見てみると、小さなナイフが容赦なく刺さっていた。
国木田くにきだ 達也たつや
不意を突かれたか‥‥
俺は脇腹を押さえると、トランシーバーを手にする。
国木田くにきだ 達也たつや
こちら国木田。突然現れた呉に脇腹を刺された。恐らく突撃してきた時に蹴りと共に喰らった。
多岐たき 朱音あかね
『え‥‥!?国木田君の近くでそんな音は‥‥』
笧三しがらみ たく
『国木田、呉の足は?』
笧三に言われ、俺は呉の足に目を落とす。
‥‥‥‥靴を履いていない。
国木田くにきだ 達也たつや
靴を履いていない。靴は手に持ってるから恐らく気付かれないように脱いだんだ。
笧三しがらみ たく
『やっぱりそうか‥‥‥国木田、まだ耐えられるか?』
国木田くにきだ 達也たつや
尋常じゃない程痛いがいけると思う。
笧三しがらみ たく
『分かった。申し訳ないが俺が行くまで耐えてろ。』
国木田くにきだ 達也たつや
了解。
俺はトランシーバーをポケットに戻し、呉に向き直る。
呉はまだ戦闘態勢で、いつ攻撃してくるか分からない。

俺の脇腹に刺さるナイフは、途中で店から取ってきたのだろうか。
痛い。血が止まらない。
くれ 葉月はづき
─────行け、慎君!
楠木くすのき しん
言われなくとも!!
西の方から走ってきた楠木は、俺を見てにやり、と笑った。

すると突然、俺の血が動き出す。
あ、これ、もしかして────────

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