第5話

XXの為に Ⅶ
268
2019/12/07 15:13
ガラガラ、と音を立てて扉を開ける一霖。
次は一霖の問題だから、迷うことはないと思うけど‥‥‥
酒葉さかば みのり
問題さーんどこですかー?
楠木くすのき しん
問題に呼びかけてどうすんだよ‥‥‥
中を見回しながら、俺たちは技術室へと入る。
そしていつも通り、ガチャ、と鍵が閉まった。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
さっさと探さないと。
千早はそう言って問題を探し始める。
俺もそれに続いて、机、椅子、棚、窓‥‥‥と技術室にあるもの諸々を探した。

だがしかし。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
‥‥‥ないね。
深海ふかみ みぞれ
ないですね。
全員が隅々まで探すも、問題の紙は見つからず。
これもまたユリの悪戯だろうか。
くれ 葉月はづき
ユリちゃん、また隠したでしょ‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
またアンモニアとかは流石にないだろうけど‥‥‥というかそもそもビーカーなんてないし。
四月一日わたぬき 柊也とうや
問題、扉にもありませんよ。
四月一日君は技術室の扉の前でしゃがみ込んで、はぁ、と溜息を吐く。

その瞬間、全員が困り果てた顔をした。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
恣意的な行動取るのほんと辞めて欲しいんだけど。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
あはは‥‥‥
一霖は苦笑する。

今回は早く決めることができそうだったのに、この有様じゃ時間は変わらなさそうだ。
‥‥‥まぁ、問題はそこじゃないんだけど。
酒葉さかば みのり
ありました!
唐突に、酒葉さんが天井に指を向ける。
俺らはそれにつられて、ばっと上を向く。
楠木くすのき しん
まじか‥‥‥
問題の紙は天井に貼ってあった。
技術室の、高い天井に。
四月一日わたぬき 柊也とうや
僕、視力悪くて全然見えないです。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
私は視力良い方なのに全く見えない。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
天井、高いからね‥‥
酒葉さんが何故天井にある紙を見つけたのかは酒葉さんの発想力が凄い、ということにしておこう。

問題は、紙に書いてある文字が見えないということだ。
くれ 葉月はづき
見える人いる‥‥‥?
呉さんの言葉に皆で顔を合わせて、困ったように首を振る。
くれ 葉月はづき
で、ですよねー‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
ユリって相当な悪趣味なんじゃ‥‥‥
深海ふかみ みぞれ
どうします?このままだとタイムオーバーですよ。
深海先輩の言葉に、皆が深く溜息を吐く。

技術室ここを見た感じ、眼鏡とか双眼鏡とかはなさそうだからこのままの状態での解読は不可能。

机に乗れば良いかもしれないが、生憎、問題がある天井は机がない所だ。

かろうじて椅子があるものの、一つだけじゃあまり意味がないほど天井が高い。
二つ重ねると不安定すぎるし‥‥‥
楠木くすのき しん
よし、椅子に乗るか。
慎の言葉に、その場の全員が目を見開く。
酒葉さかば みのり
えっ!?めっちゃ不安定で危ないですよ!?
楠木くすのき しん
支えてれば大丈夫だろ。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
支えても結構な不安定感だと思うけど。
楠木くすのき しん
そこは体感の良い奴がやれば良いだろ。瑞樹とかさ。
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥‥へ?
唐突に話の方向を俺に向けられ、変な声が出る。
千島ちしま 瑞樹みずき
いやいやいや!それだったら四月一日君とかの方が体感良さそうだし!
四月一日わたぬき 柊也とうや
体力と体感は多分負けてますよ。それに僕は千島先輩より背が小さいので。
俺の言葉は、四月一日君によって撤回される。
楠木くすのき しん
んじゃ、宜しく。男子組が支えるから頑張れ。
千島ちしま 瑞樹みずき
んな他人事みたいに言うなよ‥‥‥
楠木くすのき しん
他人事だな。
千島ちしま 瑞樹みずき
酷。
‥‥‥と、いうわけで。

俺は何段も重ねた椅子の上に立つことになったのだった。



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