第37話

XXの真偽 ⅩⅩⅦ
89
2020/07/22 07:06
代々木よよぎ あかつき
─────やれ。
東堂とうどう たける
は?
ユリが試合開始の合図をしたのと同時に、俺はドラゴンのぬいぐるみで攻撃を仕掛ける。

東堂を狙ったのは純粋に、近かったからだ。
それに、深海は能力で何とか対処できてしまいそうだし、本能寺はしぶとく反射神経も良さそうだったのもある。

敵は勿論、味方も驚いていた。
まぁ‥‥未来予知ができる碑賀は例外だが。
四月一日わたぬき 柊也とうや
『四月一日です。場所はどうやら三冠デパートの屋上駐車場のようです。』
地上に降りると、耳元から四月一日の声が聞こえた。
俺は地図を確認しつつ、口を開く。
代々木よよぎ あかつき
代々木。俺は青峡大学のキャンパス内。
碑賀ひが あずま
『碑賀。俺は七佐ビルとハイツ宮余みやあまの間‥‥まぁ路地裏ってやつ。』
全員の場所を確認しこれからをどうするか考えていると、碑賀が躊躇いもなく口を開いた。
碑賀ひが あずま
『試合開始直後の代々木の攻撃は今猛烈に凄いって言いたいんだが、もうすぐ話せなくなるから今のうちに話したいことがある。』
碑賀の口数の多さや、人を褒めることがあるのかとか、少し意外性のある発言に驚く。
それに、話せなくなる、とは‥‥?
碑賀ひが あずま
『地上に降りる前、本能寺が七佐ビルの屋上に降り立ったのが見えた。多分向きからして俺がここにいることはバレてない。そんで今、俺は七佐ビルの屋上に向かってる。』
四月一日わたぬき 柊也とうや
『つまり碑賀先輩は、本能寺先輩と第二ラウンドを?』
碑賀ひが あずま
『見付かったらそうするつもり。でも、相性的に四月一日と代々木でも深海は厳しいから屋上のドアの前で作戦を盗み聞きしようと思ってる。』
自分の声が聞こえたら盗み聞きにならないから、「話せなくなる」ということか。
代々木よよぎ あかつき
了解。けどこっちは話してても大丈夫か?報告もあるだろうし。
すると碑賀は、「問題ない。」と言ってそれきり反応はなかった。

俺はまた地図を確認する。
ここから碑賀のいる七佐ビルはさほど遠くはないが、四月一日のいる三冠デパートの方が明らかに近い。
合流するのであれば、四月一日が先になるだろうか‥‥‥

けど、二人揃った所で深海に対抗できる気がしない。
四月一日は色覚操作だけど、周りを凍らされては意味が無い。
俺はそもそも本能寺ほどの火力を出せないから、きっと鎮火される。
まぁ所詮ぬいぐるみだし‥‥‥

‥‥‥そういえば、デパートって‥‥‥うん。あるよね。
俺はそう思い、トランシーバーに話しかけた。
代々木よよぎ あかつき
『こちら代々木。四月一日、少しお使いを頼まれてくれないか?』
俺がそう言うと、イヤホンから間抜けな声が聞こえてくる。
四月一日わたぬき 柊也とうや
『へ?お、お使い、ですか‥‥?』
代々木よよぎ あかつき
そう、お使い。
「良いですけど‥‥」と腑に落ちなさそうな四月一日に、俺はお使いの内容を告げる。
代々木よよぎ あかつき
─────というわけなんだけど、頼まれてくれるか?
四月一日わたぬき 柊也とうや
『なんですか、それならそうと早く言ってくださいよ。頼まれる以外の選択肢はありません。』
四月一日の強気な発言に少し笑いつつ、俺は「じゃあよろしく。」とだけ言ってトランシーバーをポケットにしまった。

今度こそ、勝てると良いけど。

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