第11話

XXの開花 Ⅵ
208
2019/12/28 11:50
真剣に自分の能力を考え始める一霖を横目に、俺はそっと溜息を吐いた。
千島ちしま 瑞樹みずき
「能力のこと考えてみよう」つってもなぁ‥‥ヒント無しじゃどうしようも‥‥‥
そもそも、能力はどうやって手に入れたのだろうか。
元々能力持ちだったらとっくに発動してるだろうし‥‥‥

‥‥‥‥もしかして‥‥『XXゲーム』が始まる前の昼休みの頭痛が関係してたりするのか?
一霖と俺と、同時に頭痛がしたことを考えるとさらに関係ありそうだけど‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
それに‥‥‥
篠北高校の全校生徒が同じ給食を食べて死んだにも関わらず、俺を含め八人の生徒は解毒剤を手に入れるまで生き残れたのはどうも不思議に思える。

“解毒剤を手に入れるまで毒に耐えた人”が能力の適応性がある‥‥‥とか‥‥‥‥?
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥まさかな。
根拠も何も無いんじゃどうしようもないな、と俺は溜息を吐く。
横をちらっと見ると、一霖はまだ能力を考えていた。
千島ちしま 瑞樹みずき
何か分かったか?
すると、う~ん‥‥‥と一霖は少し渋い顔をした。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
全っ然分からないけど‥‥‥能力って格好いいよなぁ‥‥‥テレパシーとか使ってみたい!
千島ちしま 瑞樹みずき
あ~、めっちゃ分かる‥‥‥!どうせならチートな能力とか‥‥‥
福冨ふくとみ 一霖いちりん
ふっ‥‥‥僕の能力にかかればこんなのどうってことないさ!
福冨ふくとみ 一霖いちりん
とか言ってみたい!
千島ちしま 瑞樹みずき
だな。
楽しそうな一霖に、ふと笑みが零れる。

一霖はよく笑う。だから俺もそれにつられて笑う。
結局の所、一霖といると笑いが絶えることはないのだ。
それが、俺にとっての“楽しい”ということ。

苦しそうな俺らを見てわらうユリとは訳が違う。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
どうせなら色々試してみよ!
千島ちしま 瑞樹みずき
試す‥‥?何を?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
だから、能力だよ!能力!色々と試したら自分の能力分かるかもよ!
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥確かにそうだな。自分の能力が分かるかも。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
じゃ、そうと決まったら!
一霖はそう言うと、俺に両手を向けた。
そして何やら手に力を入れている。

これは‥‥‥何を試してるんだ?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
う~ん‥‥‥違ったかぁ‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
今の、何試してたんだ?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
じゃあ次で教える!
“次で教える”‥‥‥?それは‥‥その‥‥‥どういうことだ?

すると一霖が、サイコキネシスだよ!と言う。

サイコキネシスか‥‥‥。
サイコキネシスって確か、念力‥‥‥‥念‥‥ね‥‥‥‥ん?
千島ちしま 瑞樹みずき
お、おい、今、一霖‥‥‥お前、何も言ってないよな?
俺の言葉に、一霖は首を傾げる。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
うん?言ってないよ?
何も言ってないのか‥‥‥‥じゃあ今の「サイコキネシスだよ!」という一霖の声は気のせ‥‥‥
福冨ふくとみ 一霖いちりん
「サイコキネシスだよ!」って伝われぇぇっ!と思って何となく力は込めたけど。
‥‥‥‥はい。気の所為ではありませんねこれは。
千島ちしま 瑞樹みずき
うん。一霖の能力ってさ、多分あれだ。意思疎通みたいな、あれ。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
‥‥‥ということはまさか?
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥そのまさか。
一霖は数秒固まって、ぱぁぁぁと効果音が出てきそうな顔で笑った。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
うんうん!瑞樹の心の声がダダ漏れ!
千島ちしま 瑞樹みずき
相手の思考まで聞き取れるのか‥‥‥というか言い方な。ダダ漏れって何か‥‥
楠木くすのき しん
おっ、瑞樹の何がダダ漏れだって?
千島ちしま 瑞樹みずき
慎は変なとこで入って来んな。
俺が即座にツッコミを入れると、近くで呉さんが笑った。
くれ 葉月はづき
三人の会話、何か聞いてて飽きない!
‥‥‥これは褒め言葉として取っておこうか。
千島ちしま 瑞樹みずき
はぁ‥‥‥
結局、自分の能力は分からないまま。
どうせなら能力に何かしら見当を付けとかないと不利になるよな‥‥‥

できるだけ見当を付けられますように。

そんなことを、少しだけ俺の未来に願った。



プリ小説オーディオドラマ