真剣に自分の能力を考え始める一霖を横目に、俺はそっと溜息を吐いた。
そもそも、能力はどうやって手に入れたのだろうか。
元々能力持ちだったらとっくに発動してるだろうし‥‥‥
‥‥‥‥もしかして‥‥『XXゲーム』が始まる前の昼休みの頭痛が関係してたりするのか?
一霖と俺と、同時に頭痛がしたことを考えるとさらに関係ありそうだけど‥‥‥
篠北高校の全校生徒が同じ給食を食べて死んだにも関わらず、俺を含め八人の生徒は解毒剤を手に入れるまで生き残れたのはどうも不思議に思える。
“解毒剤を手に入れるまで毒に耐えた人”が能力の適応性がある‥‥‥とか‥‥‥‥?
根拠も何も無いんじゃどうしようもないな、と俺は溜息を吐く。
横をちらっと見ると、一霖はまだ能力を考えていた。
すると、う~ん‥‥‥と一霖は少し渋い顔をした。
楽しそうな一霖に、ふと笑みが零れる。
一霖はよく笑う。だから俺もそれにつられて笑う。
結局の所、一霖といると笑いが絶えることはないのだ。
それが、俺にとっての“楽しい”ということ。
苦しそうな俺らを見て嗤うユリとは訳が違う。
一霖はそう言うと、俺に両手を向けた。
そして何やら手に力を入れている。
これは‥‥‥何を試してるんだ?
“次で教える”‥‥‥?それは‥‥その‥‥‥どういうことだ?
すると一霖が、サイコキネシスだよ!と言う。
サイコキネシスか‥‥‥。
サイコキネシスって確か、念力‥‥‥‥念‥‥ね‥‥‥‥ん?
俺の言葉に、一霖は首を傾げる。
何も言ってないのか‥‥‥‥じゃあ今の「サイコキネシスだよ!」という一霖の声は気のせ‥‥‥
‥‥‥‥はい。気の所為ではありませんねこれは。
一霖は数秒固まって、ぱぁぁぁと効果音が出てきそうな顔で笑った。
俺が即座にツッコミを入れると、近くで呉さんが笑った。
‥‥‥これは褒め言葉として取っておこうか。
結局、自分の能力は分からないまま。
どうせなら能力に何かしら見当を付けとかないと不利になるよな‥‥‥
できるだけ見当を付けられますように。
そんなことを、少しだけ俺の未来に願った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。