第36話

XXの真偽 ⅩⅩⅤ
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2020/04/25 15:12
国木田くにきだ 達也たつや
『こちら国木田。突然現れた呉に脇腹を刺された。恐らく突撃してきた時に蹴りと共に喰らった。』
敵と味方との位置情報を確認している最中。
イヤホンから聞こえる国木田君の声は苦しそうで、それでもって報告の内容がとても信じられないものだった。
多岐たき 朱音あかね
え‥‥!?国木田君の近くでそんな音は‥‥
青峡高校に向かう足音は笧三君を含めて三人。
笧三君はまだ到着していない。
けれど、その他二人もまだ青峡高校の敷地内に辿り着いていないのだ。

ならば何故、私は国木田君に近付く呉さんに気付かなかったのだろう。
どうやって彼女は私の能力をくぐったのだろう。

そんなことを悶々と考えていると、笧三君が突然よく分からない話を国木田君に振った。
笧三しがらみ たく
『国木田、呉の足は?』
足?呉さんの足なんか見て、一体どうするつもりなのだろうか。
何も意味がないのであれば、多少にも変態扱いされるような発言。
何か深意はあるはずだろうけど‥‥‥
国木田くにきだ 達也たつや
『靴を履いていない。靴は手に持ってるから恐らく気付かれないように脱いだんだ。』
そこで、あ、と声が漏れる。

そうだ。私が能力で認識していたのは、あくまで靴音。足音、という大きな括りの中にはあるが、素足では聞こえない音。

呉さんはそれを見越した上で、靴を脱いだんだ。
今回は呉さんの方が一枚上手だったか‥‥
国木田君に申し訳ない。
笧三しがらみ たく
『やっぱりそうか‥‥‥国木田、まだ耐えられるか?』
国木田くにきだ 達也たつや
『尋常じゃない程痛いがいけると思う。』
笧三しがらみ たく
『分かった。申し訳ないが俺が行くまで耐えてろ。』
国木田くにきだ 達也たつや
『了解。』
そこで、会話がブツッと切れる。

尋常じゃない程痛い、という国木田君の言葉を聞いて、さっきよりも本当に国木田君には申し訳が立たなくなってきた。

ごめんなさい、国木田君。
私、これから弁解する。

そんなことを思いながら、耳を澄ませた‥‥‥が。
時既に遅し、と言うべきか。
もう青峡高校に敵チームの二人が到着していたのだ。
多岐たき 朱音あかね
報告が遅れました!青峡高校に敵チーム二名が到着した模様。国木田君、そっちに来た?
そう質問するも、何故か応答が来なかった。
多岐たき 朱音あかね
国木田君‥‥‥?
笧三しがらみ たく
『多岐。俺も青峡高校に到着した。』
多岐たき 朱音あかね
あっ、はい!了解。あと、そっちに国木田君いる?応答がなくて‥‥
笧三しがらみ たく
『人影が校庭の中央に三つ。国木田はそこにいると思‥‥‥』
その三人に近付きながらなのか笧三君は移動しながら話していたけれど、徐々にその動きが止まり、更には話も途切れた。
多岐たき 朱音あかね
笧三‥‥君?
私は笧三君の名前を呼んでみる。
すると、笧三君は意味深な言葉を吐き捨てた。
笧三しがらみ たく
『お前ら、一体どうやって‥‥‥』
そして間もなく、笧三君の声がピタリと聞こえなくなった。
私は悟った。

“二人は敵チームにられた”、と。
多岐たき 朱音あかね
嘘でしょ‥‥一人で男二人に身体能力上昇中の人一人とか‥‥‥
護身術や能力があったとて、今の状況での逆転は無理に等しい。
駄目だ、これは悪足掻きさえできないかも。
多岐たき 朱音あかね
‥‥‥‥ユリさん。
私は溜息を吐き、どこかに潜んでいるであろうユリさんを呼ぶ。
ユリ
は~い、降参かな?
多岐たき 朱音あかね
降参で。
ユリ
おっけ~!
ユリさんはそう言って笑うと、わざとらしく咳払いをした。
ユリ
第四試合、Cチームの降参によりAチームの勝利とする!

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