第23話

XXの開花 XXX
125
2020/03/10 14:56
音羽おとは 捺祢なつね
第二十試合、福冨一霖 対 笠木勝。
音羽おとは 捺祢なつね
試合開始。
試合開始の合図が下りると、呉さんに鳩尾を殴られた印象しかない笠木君が一霖に早速攻撃をした。
くれ 葉月はづき
勝君の能力は鎌鼬‥‥だけど一霖君は意思疎通だよね?一霖君、大丈夫かな‥‥
四月一日わたぬき 柊也とうや
どうでしょう‥‥福冨先輩の能力はサポートや司令塔に向いてるので、個人戦となると少し厳しい気もしますが‥‥‥
そんな言葉を聞いて、呉さんは試合を観戦しながら唸る。
一霖はどこもかしこも切り傷だらけで、攻撃する様子は全くなかった。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
痛っ‥‥
すっ、と一霖の眼球が切られる。
千島ちしま 瑞樹みずき
一霖‥‥!
これで一霖は片眼が使えない。

死ぬとは限らないとはいえ怪我をしたら痛いものは痛いし、この試合は致命傷を負うようなこともない。
つまり、一霖には痛みに耐えるだけの試合になってしまう。
酒葉さかば みのり
一霖先輩このまま痛みに耐えるだけなんでしょうか‥‥
くれ 葉月はづき
私そういうの駄目かも‥‥
観客席の人たちの不安が大きくなる。

すると、一霖は溜息を吐いたように見えた。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
皆うるさいよ‥‥そんな心配ならもう良いや。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
捺祢君!降参で!
一霖は捺祢にそう言って笑った。
捺祢は何故か少し言葉を詰まらせてから、一歩前に出る。
音羽おとは 捺祢なつね
第二十試合、福冨一霖の降参により笠木勝の勝利とする。
捺祢の終了の合図と同時に、一霖への攻撃はストップした。
酒葉さかば みのり
け、結局私と同じく全敗になっちゃいました‥‥
楠木くすのき しん
大丈夫かよ一霖‥‥
呉さん、酒葉さん、慎は戻ってくる一霖を心配そうに目で追う。
一霖は俺たちに笑顔で手を振った。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
ただいま~!負けちゃった!
楠木くすのき しん
んなゲームで負けたみたいなノリで言うなよ‥‥
慎の言葉に何故か一霖は不思議そうにして、それからにこっと笑った。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
これもゲームだよ?
楠木くすのき しん
いや、そうなんだけど!ほら、テレビゲームとかカードゲームとかそこら辺のやつ!命懸けないやつ!
そんな二人の会話を聞いて安心したのか、呉さんはふふっと笑う。

どの試合でもそうだが、いつの間にか一霖の傷は癒えている。
どんな仕組みなんだろう‥‥‥
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
あ、次。
すると、千早は手に持つ紙を見て立ち上がった。
次ってことは‥‥‥とうとう最後の試合か。
瀬戸口せとぐち りゅう
君、災難だね。
楠木くすのき しん
うおっ!?
突如現れた龍は、千早の番号を覗き込むようにして見ていた。
千島ちしま 瑞樹みずき
な、なんだ‥‥龍か。驚かせないでよ。
瀬戸口せとぐち りゅう
なんだとは何だ。
龍が楽しそうに笑うと、千早は龍を睨んだ。
龍はそんな千早を見ても怯むことなく笑い続ける。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
で?災難って?
瀬戸口せとぐち りゅう
あぁ‥‥それね。ほら、フィールド見て。
龍が指で差した先のフィールド。
そこには‥‥
楠木くすのき しん
まじか‥‥東ってやばくね?
そう。そこには東が立っていたのだ。
けれど千早は少しも不機嫌にはならなかった。
逆に機嫌が良さそうにも見える。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
強い奴と闘うのって燃えるよね。
千早は楽しそうに笑ってそう言い捨てて、フィールドへと向かっていった。
千島ちしま 瑞樹みずき
何で楽しそうなんだ千早は‥‥‥
楠木くすのき しん
あれじゃね?何かそういうのが快感的な。
千島ちしま 瑞樹みずき
ばっ、馬鹿!お前そんなこと言ったら‥‥
すると、千早は足を止めてこちらを振り向いた。
千早は地獄耳なのだ。この距離でさえ聞こえてしまう。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
楠木、千島、殴られる準備しといて。
楠木くすのき しん
え゙。
千島ちしま 瑞樹みずき
何で俺‥‥
隣にいる龍は、そんな俺を励ますように俺の肩に手を置く。
‥‥‥‥笑いを堪えているように見えるのは気のせいにしておこう。
瀬戸口せとぐち りゅう
さぁーて。この試合、どうなるかね。
龍はにやりと笑って、フィールドを見つめた。

プリ小説オーディオドラマ