地面に投げ出され体勢を崩したが、なんとか体勢を立て直してすとん、と着地ができた。
着地してすぐ、俺は地図を見ながら周辺を見回す。
どうやらここは、有料駐車場のようだ。
耳元から聞こえる楽しそうな声に、俺は心底がっかりする。
辻君には苦手意識があるけど、同じ高校の酒葉さんがいるなら‥‥‥と少し思っていたんだけど‥‥‥
酒葉さんって誰とでも仲良くなれちゃうから、この場合は逆効果。1-1だと思っていたのが、1+1になったわけだ。
俺、これからこの一年二人のストッパーにならないといけないのか‥‥‥辛い。
トランシーバーを口元に近付けて話す。
使い方、これで合ってるよな‥‥‥?
辻君の位置を地図で確認していると、酒葉さんからとんでもない言葉が発せられた。
それも、自信満々な声で。
地図を見てもとんちんかん‥‥その上、友達に教えてもらわないと分からなかった程の方向音痴。
これ‥‥‥かなりまずいのでは?
焦りを悟られないように、けれど必死に、酒葉さんの位置を確認しようと酒葉さんに問う。
酒葉さんが言うグラムハイツの場所を地図を見て確認する。
あれ‥‥ここって‥‥‥‥
俺がそう指示を出すと、二人はそろって『はぁ~い!』と元気な声で応えた。
前の試合の時は仲間の位置をばらばらにされていたから、今回もそうなるかもって思って合流は諦めていたけど‥‥‥運が良かったのか悪かったのか、何とか合流はできそうだ。
問題は敵チーム。
レア能力者が二人で、その上一人は個人戦で相手の鳩尾抉って圧勝。
しかも皆顔見知りどころか楽しく会話をした仲で‥‥‥攻撃とかやりづらい。
でも‥‥‥後輩二人に後れを取ったらなんかかっこ悪いし、命の為にも負けるわけにはいかないから、今は全て忘れよう。
自分に暗示を掛けるんだ。
慎たちは知らない敵だ、と‥‥‥。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。