第28話

XXの真偽 Ⅸ
92
2020/03/28 14:53
千島ちしま 瑞樹みずき
うおっ‥‥‥と。
地面に投げ出され体勢を崩したが、なんとか体勢を立て直してすとん、と着地ができた。

着地してすぐ、俺は地図を見ながら周辺を見回す。
どうやらここは、有料駐車場のようだ。
つじ 林太郎りんたろう
『えー、テステス。聞こえますかー?辻で~す!林太郎で~す!』
酒葉さかば みのり
『聞こえます!こちら酒葉!』
つじ 林太郎りんたろう
『うわぁ~!凄い!聞こえる!これがトランシーバーってやつかぁ‥‥かっこいい~!』
酒葉さかば みのり
『だよね!かっこいい!!一度使ってみたかったんだよ~!』
耳元から聞こえる楽しそうな声に、俺は心底がっかりする。

辻君には苦手意識があるけど、同じ高校の酒葉さんがいるなら‥‥‥と少し思っていたんだけど‥‥‥
酒葉さんって誰とでも仲良くなれちゃうから、この場合は逆効果。1-1だと思っていたのが、1+1になったわけだ。

俺、これからこの一年二人のストッパーにならないといけないのか‥‥‥辛い。
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥千島。聞こえてるよ。とりあえずそれぞれの位置情報を把握しよう。
トランシーバーを口元に近付けて話す。
使い方、これで合ってるよな‥‥‥?
つじ 林太郎りんたろう
『はぁ~い!僕は多分ゆうらぎ駅のホームにいま~す!』
酒葉さかば みのり
『私は分かんないです!意味不明!』
辻君の位置を地図で確認していると、酒葉さんからとんでもない言葉が発せられた。
それも、自信満々な声で。
千島ちしま 瑞樹みずき
え、えっと‥‥?地図持ってない‥‥とか?
酒葉さかば みのり
『いえ、普通にあります!』
千島ちしま 瑞樹みずき
じ、じゃあ何で‥‥‥
酒葉さかば みのり
『地図ってよく分かんないんですよ~!どこをどう見てもとんちんかんで~‥‥』
酒葉さかば みのり
『というか私、極度の方向音痴です!友達が教えてくれました!』
地図を見てもとんちんかん‥‥その上、友達に教えてもらわないと分からなかった程の方向音痴。

これ‥‥‥かなりまずいのでは?
千島ちしま 瑞樹みずき
『えっと‥‥‥うん。じゃあさ、何か周りに目立った建物とか目印になるようなものない?あと、酒葉さんは今、建物の中?それとも公園とか?』
焦りを悟られないように、けれど必死に、酒葉さんの位置を確認しようと酒葉さんに問う。
酒葉さかば みのり
『よく分からない広い道路にいます!目立ったものは‥‥‥う~ん‥‥‥あっ!グラムハイツ?って書いてあるマンションが目の前に!』
つじ 林太郎りんたろう
『グラムハイツ‥‥‥僕、そこ結構近いですよ~!』
酒葉さんが言うグラムハイツの場所を地図を見て確認する。
あれ‥‥ここって‥‥‥‥
千島ちしま 瑞樹みずき
酒葉さん、道の少し先に有料駐車場ってない?
酒葉さかば みのり
『有料駐車場?えっと‥‥‥あれか!あります!』
千島ちしま 瑞樹みずき
じゃあさ、そこまで来てくれる?俺、そこにいる。
つじ 林太郎りんたろう
『えっ?じゃあ僕も近いんで先輩に会いに行きま~す!』
千島ちしま 瑞樹みずき
‥‥‥‥了解。10m圏内に入ったら一応連絡して。
俺がそう指示を出すと、二人はそろって『はぁ~い!』と元気な声で応えた。

前の試合の時は仲間の位置をばらばらにされていたから、今回もそうなるかもって思って合流は諦めていたけど‥‥‥運が良かったのか悪かったのか、何とか合流はできそうだ。

問題は敵チーム。
レア能力者が二人で、その上一人は個人戦で相手の鳩尾抉って圧勝。
しかも皆顔見知りどころか楽しく会話をした仲で‥‥‥攻撃とかやりづらい。

でも‥‥‥後輩二人に後れを取ったらなんかかっこ悪いし、命の為にも負けるわけにはいかないから、今は全て忘れよう。
自分に暗示を掛けるんだ。

慎たち奴等知らない敵・・・・・だ、と‥‥‥。

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