グラムハイツ近くの有料駐車場に収集をかけて約一分。
辻君が到着と同時に笑顔でこちらに手を振る。
酒葉さんとはもう既に合流して、俺たちが雑談をしていた所だった。
両手を大きく開いて、規模の大きさを表そうとする辻君。
‥‥‥何歳だよ、この人。
俺がそう言うと、二人は確かに~!と陽気に笑った。
こんなワイワイしてて敵チームに見つからないのかな‥‥‥見つかったら最悪。
真面目に考えなさい。
酒葉さんはそう言いかけて、そのまま固まる。
酒葉さんの目線は遠くの空にあった。
酒葉さんは「ついでに慎先輩の叫び声が聞こえました」と言って空に眼を細めた。
呉さんに場所を知られた事実を聞いた瞬間、俺は物凄く焦った。
けれど、その焦りはこの二人に向ける呆れに押し潰されつつあるのです。
画面向こうに慎と龍がいないってのが救いだよな‥‥‥いたら絶対に大爆笑されている。
確かにこの二人に判断を任せるのはちょっとなぁとかは思うけど‥‥‥別にリーダー制とかないし、俺はあまり司令塔とか向いてないからなぁ‥‥‥
思ったよりも素直に俺の意見を承認してくれたので、少し驚く。
しかも即答、という形だったのでよく考えてないんじゃ‥‥と思った。
辻君はそう言って、俺の手を掴んで走り出す。
合流の時といい、今といい、辻君は相当な行動派らしい。
今度は酒葉さんも俺のもう片方の手を掴んで一緒に走った。
‥‥行動派は酒葉さんも同じだな。
辻君が能力を玩具のように使うことは変わりなく、相変わらず元気な笑顔で俺に笑いかける。
辻君は行動派で元気な子だ。けれどそれは、決して猪突猛進タイプというわけではない。
そもそも俺は辻君の“本気”という顔を見たことがない。
つまり、だ。
もし慎たちと闘い始めたとして、辻君は本気で勝とうとしてくれるのか。
今みたいにずっとヘラヘラしているんじゃないのか。
それが、少し俺の中で心配事となった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!